職種に関わらず、労働に休憩が不可欠なのは言うまでもありません。特に体力を必要とする建設現場では休憩が非常に重要です。休憩もとらずに作業をすると、健康上の問題などさまざまなリスクが考えられます。そのため、建設現場では、一般的な仕事よりも休憩の回数を多くとっています。
今回は、基本的な休憩時間の定義と建設現場における休憩時間の必要性を具体的に解説します。さらに現在、国が推進している建設現場の休憩に関する環境整備についても紹介します。
■休憩時間の定義と建設現場における休憩の取り方
労働基準法で定める休憩時間の定義と建設現場の休憩時間の特徴、1日のスケジュールを見ていきましょう。
◇労働基準法における休憩時間の定義
労働基準法第34条では、休憩時間は6時間超で45分、8時間超で少なくとも1時間の休憩を与えることと定めています。休憩時間の定義は、「労働から離れることが労働者の権利として保障されている時間」のことです。つまり、仕事をしない時間でも、電話や来客応対する必要がある場合は休憩時間とみなしません。
◇建設現場の休憩時間は3回ある
建設現場では12時の昼休憩のほかに、10時と15時に休憩をとることが一般的です。具体的には、12時では1時間、10時と15時には15分または30分の休憩をとります。
大規模な建設工事だけでなく、住宅の建設やリフォームなどの現場でも同じように3回の休憩をとることが一般的です。ただし、施工管理の場合、午後は事務所などに場所を移すため、15時の休憩をとらないことが多いようです。
◇建設現場の1日のスケジュール
3回の休憩時間を含む、建設現場の1日のスケジュールを見ていきましょう。
・7時30分:朝礼、体操
・8時30分:作業
・10時:休憩
・10時30分:作業再開
・12時:昼休憩
・13時:作業再開
・15時:休憩
・15時30分:作業再開
・17時:作業終了
休憩中は水分補給や暖をとるなど思い思いに過ごします。また、作業員と施工管理が集まって、話をすることもあります。同じ現場で働く仲間として、意思疎通する貴重な時間といえるでしょう。
■建設現場の休憩時間が多い理由
労働基準法が定める休憩時間は「1日1回まで」とされていますが、建設現場ではなぜ3回も休憩時間があるのか、その理由を解説します。
◇集中力の維持
建設現場という環境は、常に危険と隣り合わせの状態にあります。事故や労災を防止するには、集中力を維持することが重要です。
しかし、人間の集中力は長く続かないうえ、体だけでなく脳も疲れていきます。2時間ごとに休憩することで、疲れた脳がリセットされて集中力が維持しやすくなります。集中力を維持した状態で作業できるため、結果的に生産性の向上につながるのです。
◇労災の予防
手順の省略や思い込みなどは、労働災害(労災)につながる「不安全行動」を引き起こす可能性があります。不安全行動とは、労働者本人もしくは関係者の安全を阻害する可能性のある行動を意図的に行なう行為のことです。
転落などの危険が起きやすい建設現場では、手間や労力などを省くことを優先しないことが大切なため、休憩時間をとり、気持ちをリセットさせることで労災の予防につなげています。
◇熱中症予防などの体調管理
建設現場の大半は屋外で作業するため、夏は暑く、冬は寒い環境下で作業します。
そのため、夏場は休憩ごとに水分補給し、熱中症の予防に努めることが重要です。
建設現場は熱中症による死傷者数が他業種と比べて多く、熱中症対策のための休憩は必須といえます。寒さも集中力や注意力の低下につながるため、休憩時間に暖をとることが大切です。
暑さと寒さも、先述した「不安全行動」を引き起こす原因となるため、休憩で体調を整えることは仕事の一部といえるでしょう。
■建設現場で快適に休憩できる環境整備
厳しい環境下にある建設現場を快適に過ごすために、国が推進している環境整備を紹介します。
◇熱中症予防の環境整備
建設現場では熱中症予防の一環として、休憩場所の環境改善と環境整備が推進されています。
熱中症の疑いがあるときは、その場ですぐに体を冷やすと、重症化を食い止める効果が期待できます。そのため、休憩場所にはエアコンや給水機、シャワー室、飲み物を冷やす冷蔵庫などの設備は最低限必要になるでしょう。炎天下の日差しを遮る屋根のある休憩場所を整備したり、テントを利用したりするケースもあるようです。
なお、保守工事などで休憩場所の整備が難しい場合、休憩車を別途用意する場合もあります。休憩車には座席やクーラーボックス、冷蔵庫などを設置することが一般的です。
◇快適トイレ
建設現場のトイレは、仮設トイレを用いることが一般的です。しかし、くみ取り式仮設トイレの臭いや汚れ、紙切れなどの劣悪な環境にあることが多い傾向です。近年は女性技術者も増えていることから、トイレの環境に不満をもつケースも少なくありません。
国土交通省は、男女ともに働きやすい環境にするため、「快適トイレ」の整備を推進しています。国土交通省が掲げる快適トイレの標準基準は次のとおりです。
・洋式便器
・手洗い場
・臭い逆流防止機能
・施鍵機能
・照明
・衣類かけフックまたは荷物置き場
また、女性技術者がいる場合は男女の区別を明確にする、トイレの入り口が見えないようにするなどの工夫も必要です。女子トイレには小物置き場やサニタリーボックス、着替えスペースなどを設置するとよいでしょう。
このように、仮設トイレよりも気持ちよく使えるトイレを整備することで、労働環境の大幅な改善につながるはずです。
■まとめ
建設現場の休憩時間は、1時間の昼休憩に加えて、10時と15時に15分または30分の小休憩をとることが一般的です。休憩時間が多い理由は、集中力の維持、体調管理、労災の予防です。休憩時間があることで、事故のない安全な作業ができるようになります。
また、休憩場所にエアコンやシャワー、冷蔵庫などを設置し、熱中症予防に努めることが大切です。劣悪な環境になりやすい仮設トイレから、快適トイレに変えることで、男女ともに働きやすい環境になるでしょう。