これまで正社員として働くのが主流だった施工管理職ですが、近年では派遣社員という働き方を選択する人が増えています。施工管理は、サービス残業や休日出勤が多い傾向にありますが、派遣社員という選択肢が登場したことで、より柔軟な働き方が可能になってきました。
派遣という働き方には、労働環境や待遇、キャリア形成といった面でさまざまなメリットがあります。ただし、デメリットも併せ持つため、両面を正しく理解したうえで選択することが重要です。本記事では、施工管理における派遣社員のメリットとデメリットについて詳しく解説します。
正社員と派遣社員の働き方の違いや、派遣の方が向いている人の特徴もまとめました。施工管理職としてのキャリアを見直したい方や、派遣社員という働き方に興味がある方はぜひチェックしてみてください。
施工管理の派遣と正社員(正規雇用)の違い
施工管理者の働き方には、正社員以外にも派遣社員という選択肢があります。
正社員は長期的なキャリア形成や安定収入が見込める一方、派遣社員は期間限定のプロジェクトや勤務地を選びやすいなど、柔軟な働き方が可能です。
どちらが向いているかは、ライフスタイルやキャリアの価値観によって異なります。以下の表では、それぞれの主な違いをまとめました。
項目 | 正社員 | 派遣社員 |
---|---|---|
雇用形態 | 無期雇用(長期前提) | 有期契約(更新あり) |
待遇・福利厚生 | 賞与・退職金・昇給あり | 派遣元の制度による |
柔軟性 | 異動や転勤の可能性あり | 勤務地や期間を選びやすい |
派遣社員の施工管理で働く6つのメリット
派遣社員の施工管理として働くと、以下6つのメリットが得られます。
サービス残業がない
派遣社員は派遣元と派遣先の間で交わした契約があり、適正な賃金を支払わない残業や休日出勤は契約違反に該当します。もしも残業や休日出勤が必要な場合、その分の給料は支給されるため、安心して働けます。
また、休日も確保されているため、ワークライフバランスが整いやすいのが派遣社員ならではのメリットでしょう。
一方、正社員の施工管理は、サービス残業を強いられることが一般的です。建設業界は残業時間の上限規制の適用がなく、災害復興事業では労働時間の規制が適用外といった要因がサービス残業を助長しているといえるでしょう。
ただし、令和6年4月以降は、一般の業種と同様に、罰則つきの時間外労働の上限規制が適用になります。原則は月45時間、年360時間です。臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間以内など一定の上限が規定されます。正社員も派遣社員と同様に、サービス残業がない労働環境に変わる可能性が高いでしょう。
働く現場を選べる
派遣社員で働く際、勤務地、残業や休日出勤の有無など、希望する条件を提示できます。派遣社員は残業がないのがメリットの一つですが、稼ぎたい場合は残業や休日出勤がある現場を希望することも可能です。
ただし、希望はある程度考慮されますが、すべてを聞き入れてくれるわけではないので注意しましょう。
一方、正社員は会社が請け負った現場で働くことが基本です。派遣社員のように希望する条件の現場とはならないため、残業や勤務地など譲れない条件がある方は派遣社員が適しているでしょう。
建設業の派遣社員は他業種より時給が高い
施工管理は専門職のため、他業種の派遣社員と比べて時給が高い傾向にあります。経験者を優遇する求人では、月収50~60万円という条件のものも少なくありません。施工管理は人手不足ということもあり、派遣先企業からの需要は安定しています。
ただし、東京などの首都圏、災害復興や高速鉄道建設など、建設需要がある地域に求人が集中する傾向があるようです。
未経験でも施工管理で働ける
建設業界は人手不足が深刻なため、未経験でも積極的に採用する企業が増えています。施工管理の派遣社員も例外ではなく、未経験者に向けた研修制度を設ける派遣会社もあるほどです。
研修では基礎を習得するもので、具体的な仕事内容やスキルは現場で吸収する必要があります。
とはいえ、未経験でも建設業界でキャリアを築く機会が得られるのは、派遣社員ならではのメリットといえるでしょう。
短期間でさまざまな現場を経験できる
派遣社員の施工管理は、1つの現場に半年~1年程度勤務することが一般的です。契約期間が終了すると新たな現場に配属されるため、いろいろな現場での経験を糧に成長できます。
また、勤務期間が決められているため、人間関係などのしがらみがないものメリットといえるでしょう。
派遣先での勤務がどうしても難しい場合、派遣元に現場を変えてもらうよう相談することも可能です。
新たな可能性の発見やキャリア形成
派遣会社は技術やスキルなどを正当に評価したうえで、派遣先を紹介してくれます。正社員でも評価を受けられますが、一般的に仕事とは別の要素が評価に影響します。
派遣社員は現場での働きぶりがそのまま評価されるため、施工管理としての自信につながるでしょう。また、さまざまな現場で働くことにより、自分では気付かなかった適性を見つけることができます。
正社員は会社が受注した現場でしか働けませんが、さまざまな現場で働ける派遣社員は、新たな可能性の発見やキャリア形成に役立てることが可能です。
派遣社員の施工管理における4つのデメリット
派遣社員の施工管理はさまざまなメリットがある反面、以下のようなデメリットも存在します。
ボーナスの支給がない
派遣社員は基本的にボーナスがありません。ボーナスが支給される派遣先もありますが、正社員と比べて少額なことが多いようです。
施工管理は派遣社員のなかでも月収は高額になる反面、ボーナスの面では正社員のほうが好待遇といえます。
雇用が不安定
建設業界は景気の影響を受けやすいため、仕事が増えたり減ったりすることが当たり前の環境です。派遣社員は不足する人員の穴埋めとされるため、需要がないと仕事を切られる可能性が高くなります。
また、景気の低迷で現場の数が減ると、働きたい現場を選べなくなる点もデメリットといえるでしょう。一方、正社員は建設需要が低下しても解雇されることはないため、派遣社員よりも安定しているのは事実です。
繁忙期は残業や休日出勤が必要
派遣社員はサービス残業がないとはいえ、繁忙期は残業や休日出勤することになります。残業したくないという理由で派遣社員になった場合、残業がある事実をデメリットに感じるかもしれません。
派遣社員にも、適正な残業代を支払う必要があります。人件費削減のために残業させない現場もあるようですが、そのような派遣先はごく一部です。忙しい時期は残業や休日出勤があると心得ておきましょう。
施工管理業務の分業
大手ゼネコンの施工管理として派遣された場合、施工管理業務が分業されていることがあります。施工管理としてすべての業務に携わりたい場合、派遣社員の立場はデメリットとなる可能性があります。
施工管理の能力が向上する業務は、派遣社員ではなく、正社員の施工管理が回されることが多いようです。正社員の長期的なキャリア形成のため、正社員を優先的に育成することは当然といえます。
ただし、施工管理として現場を預かる以上、派遣社員でも必要なことは教えてくれます。責任ある仕事をしたい場合、自らが学ぶ姿勢を示し、派遣先企業から認められることが大切です。
施工管理の派遣が向いている人の特徴
派遣として施工管理に従事することで、「働く時間を調整したい」「勤務地を選びたい」といった希望を実現しやすくなります。
とくに、以下のような志向を持つ人に、派遣という働き方が適していると言えるでしょう。
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✓ 仕事とプライベートのバランスを大切にしたい人派遣は残業や休日出勤の少ない現場を選べるため、プライベートを重視しやすい環境です。
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✓ 未経験から施工管理職へチャレンジしたい人施工管理職は人手不足の影響もあり、未経験でも現場経験を積みやすく、ステップアップにつながります。
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✓ 勤務地や勤務条件にこだわりたい人派遣なら転勤や異動の可能性が低く、自分の希望に合った働き方を選びやすいのが特長です。
仕事と私生活のバランスを大切にしたい人
施工管理は多忙な職種として知られており、正社員の場合、長時間労働や休日出勤が発生することも少なくありません。一方、派遣社員であれば契約時に勤務時間や休日の条件を明確にできるため、ライフスタイルを優先した働き方を実現しやすくなります。
家族との時間を確保したい人や趣味・副業を大切にしたい人にとって、過度な残業や突発的な業務に縛られない派遣の働き方は、大きなメリットといえるでしょう。
未経験から施工管理職にチャレンジしたい人
施工管理の仕事に初めて挑戦する人にとっても、派遣という働き方は適しています。建設業界では慢性的な人手不足が続いており、未経験者であっても前向きな姿勢や学習意欲が評価されやすくなっています。
とくに、派遣の場合は、経験よりも柔軟な対応力や勤務条件のマッチングが重視されることが多いため、まずは実務経験を積みたい人に適しています。
現場での実績を積み重ねると、将来的に正社員登用を目指すことも可能です。
勤務地や勤務条件にこだわりたい人
派遣社員は、就業先や勤務条件を自分の希望に合わせて選べる点が大きな魅力です。正社員として働くと、会社の都合で異動や転勤が命じられることもありますが、派遣であれば勤務地や労働時間、業務内容などを事前に確認し、自分に合った条件で契約できます。
「自宅から通いやすい現場がいい」「残業の少ない職場で働きたい」といった希望がある人にとって、派遣という働き方は非常に相性が良いといえるでしょう。
建設業界に強い派遣会社の選び方
建設業界で派遣として働く際、どの派遣会社を選ぶかは非常に重要です。業界に精通していない派遣会社を選んでしまうと、案件数が少なく、希望に合わない現場への配属や、十分なサポートが受けられないリスクもあります。
ここでは、建設業界の事情に詳しく、働きやすい環境を提供してくれる派遣会社を見極めるためのポイントをわかりやすく解説します。
経験に不安がある人は「研修制度・サポート体制」に注目する
未経験者が施工管理にチャレンジするなら、教育体制が整っている派遣会社を選ぶことが大切です。未経験や経験が浅い方でも、基礎知識を学んでから現場に出られるため、安心してスタートできます。
また、派遣中にトラブルや不明点が生じた場合、サポート窓口があることで一人で抱え込まず、気軽に相談できる点もメリットだと言えるでしょう。
- 基礎研修の有無(eラーニング・実技など)
- 現場配属後のフォロー体制
- 福利厚生(社会保険・交通費支給など)
得意分野で働きたい人は保有する案件を確認する
派遣会社ごとに紹介できる案件の内容や企業の規模は異なります。自分が得意とする施工領域(建築、土木、電気など)にマッチした現場で働きたいなら、紹介先を事前に確認しておきましょう。キャリアの方向性に沿った派遣先を見つけやすくなります。
- 大手ゼネコンや準大手との取引実績
- 特定分野(例:商業施設、橋梁など)の案件割合
- 常駐社員や元派遣社員の定着率
働く現場を選びたい人は「派遣会社の規模」を確認する
派遣先の選択肢を広げたい人は、なるべく規模の大きい派遣会社を選ぶのがおすすめです。案件数が豊富であれば、希望の勤務地や条件に合う現場を見つけやすくなり、スキルアップのチャンスも広がります。
キャリアアップを見据えるなら、紹介実績の多い企業かどうかも見ておくと安心です。
- 全国対応の支店ネットワーク
- 年間紹介件数・就業実績
- キャリア相談窓口の有無
派遣社員として働く施工管理者の将来性
派遣という働き方でも、施工管理者としての将来性は十分にあります。建設業界では慢性的な人手不足が続いており、経験を積んだ人材は、正社員とほとんど変わらないほどの需要があります。
派遣社員として現場経験を重ねることで、専門性を高めたり、特定の工種に強みを持つことができれば、将来的に高収入や好条件の案件を選べるようになるでしょう。
また、希望すれば正社員登用を目指すことも可能です。柔軟な働き方をしながらキャリアアップを実現できる点で、派遣施工管理は良い選択肢だといえます。
まとめ
派遣社員の施工管理として働く場合、派遣元と派遣先企業の契約があり、正社員のようなサービス残業がほとんどありません。繁忙期は休日出勤する必要がありますが、働いた分の残業代はすべて支払われます。
休日も確保されているため、正社員よりもワークライフバランスが整いやすいのは派遣社員の魅力だと言えるでしょう。また、派遣社員は仕事の適正な評価が得られるうえに、新たなキャリア形成にもつながります。
ただし、景気により雇用が安定していない、仕事の責任が軽いなどデメリットも存在します。自分が希望する働き方を明確にしたうえで、派遣社員を目指すことが大切です。
正社員から派遣社員へ転向するか悩んでいる方は、キャリアアドバイザーにご相談ください。