施工管理は、現場の指揮をとり、安全・品質・工程の管理を担う重要な仕事です。しかしその一方で、長時間労働や重い責任、人間関係のストレスなどから、「体力的に限界」「もう辞めたい」と感じる人も少なくありません。
とはいえ、勢いで辞めてしまうと後悔するケースもあります。大切なのは、「辞めたほうがいい人の特徴」や「施工管理を辞めるベストなタイミング」を知ったうえで、冷静に判断することです。そうすれば、転職後に「辞めてよかった」と思える選択ができるでしょう。
本記事では、「施工管理を辞めたいと感じる理由」や「後悔しないための判断基準」「辞めるベストなタイミング」について解説します。施工管理の経験を活かせる転職先もご紹介するので「今すぐ辞めるべきか、それとも続けるべきか」と悩んでいる方に必見です。
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施工管理を辞めたいと思う8つの理由
施工管理の仕事は、「体力的にきつい」「責任が重い」 などの理由から、大変だと感じる人もいます。
ここでは、施工管理を辞めたいと感じる主な理由を8つ紹介します。 自分がどの点に悩んでいるのかを整理し、今後のキャリアを考える際の参考にしてください。
1. 残業が多い・休日出勤が多い
施工管理を辞めたい理由として、残業や休日出勤の多さが挙げられます。施工管理の仕事は、工事の進捗状況に応じて勤務時間が変動し、予定より遅れが出ると、残業や休日出勤が避けられません。
また、現場業務に加えて、営業所での書類作成や報告業務が発生することもあり、業務時間が長くなりやすい傾向にあります。
2. 仕事量が多い・責任が重い
施工管理は業務範囲が広く、責任も大きいため、効率的な業務遂行が求められる仕事です。
工事の工程管理だけでなく、安全・品質・原価管理、書類作成、打ち合わせなど、関わる業務は多岐にわたります。時には、スケジュール調整が難しく、業務量が増えることもありますが、現場を円滑に進めるための調整力や管理能力が養われる職種でもあります。
また、施工管理の仕事は、細かなミスが大きなトラブルにつながる可能性があるため、一つひとつの仕事に対する責任も重くなります。こうした業務量の多さと、心理的ストレスが要因で辞めたいと感じる人も少なくありません。
3. 人間関係の悩みを抱えている
施工管理は、さまざまな立場の人と関わる仕事であり、調整力や交渉力が求められるため、コミュニケーションの難しさを感じることもあります。上司や同僚に加え、現場の職人や取引先など、多くの人とコミュニケーションを取る必要がある仕事です。そのため、意見の食い違いや衝突などの際に、板挟みになるケースがあり、人間関係にストレスを感じる人もいます。
人間関係での負担を少しでも減らすには、現場や取引先と積極的にコミュニケーションを図り、信頼関係を構築する必要があります。実際に現場に足を運んで意見を聞き、社内や取引先へ協力を得るといった高いコミュニケーション力も求められるでしょう。
4. 給料が見合わない
施工管理の膨大な仕事量や責任の重さに対して、給料が見合っていないと不満を抱いてる人も少なくありません。職業情報提供サイトjob tagによると、建築施工管理の平均年収は約632万円、賞与を含まずに計算すると月額50万円以上になります。
基本給以外にも各種手当があるため、一般的な仕事よりも給与は高めです。しかし、残業や休日出勤など労働時間が長く、業務範囲も多岐にわたるため、給料が見合っていないと感じる人もいます。
少しでも仕事内容に見合った給料へ上げるためには、現場経験を重ねながら資格を取得し、専門性を高めることが大切です。
5. 体力的にきつい
施工管理は、現場での指示や管理業務が中心ですが、長時間の立ち仕事や移動が多く、体力的な負担が大きいため、辞めたいと感じる人がいます。
施工管理者は、作業員の指揮・監督や工程管理、安全管理などが主な業務で自ら作業を行うことは基本的に求められません。 しかし、現場の状況を把握するために長時間現場に立ち続けることが多く、体力を消耗しやすい環境です。
特に体力に自信がない人にとっては、肉体的なきつさが辞めたい原因の1つとなります。仕事で必要な体力を維持するには、規則正しい食事と十分な休息を確保し、適度な運動を取り入れることが大切です。
6. 精神的にきつい
日々の管理業務や書類の作成、打ち合わせなど大量の仕事をミスなく進めることは、精神的なプレッシャーになります。1つのミスが損失や現場での事故につながる可能性もあるため、日常的なプレッシャーに疲弊する人もいます。
ストレスを軽減させるには、こまめなコミュニケーションや計画の振り返りなどで、スムーズに業務が進むようにしましょう。どんなに好きな仕事でも、精神的に疲弊してしまっては、継続が難しくなります。
周囲に相談し、適切なメンタルケアを行うことで、精神的な負担を軽減できる可能性があります。精神的な疲れを感じている人は、厚生労働省が提供する「5分でできる職場のストレスセルフチェック」を試し、自分の疲労度を把握することをおすすめします。
7. キャリアパスが見えない
施工管理の仕事は、目の前の業務に追われがちで、将来のキャリアについて考える余裕が持てず、不安を感じる人もいます。
施工管理は、安全管理・品質管理・原価管理など、幅広い業務を担当するため、多くの知識や技術が求められます。 しかし、日々の業務が忙しく、次のキャリアの方向性を整理する時間が取れないまま働き続けている人も少なくありません。
キャリアに不安を感じたら、まずは自分が今後どのような働き方をしたいのかを整理することが大切です。「施工管理としてスキルアップしたいのか」「他の職種に興味があるのか」など、今の自分の気持ちを明確にすることで、次のステップが見えてくるかもしれません。
8. ほかの仕事に興味がある
働いているうちにほかの仕事に興味を持ち、辞めたいと考える人もいます。同じ建設業界でも、デザインや営業、自治体の土木部門など施工管理の経験を活かせる職種は多くあります。
例えば、現場の流れを理解している施工管理経験者は、設計や積算業務での強みを発揮しやすいといえます。顧客や業者との折衝経験を活かせば、建設業界向けの営業職も1つの選択肢となるでしょう。
また、不動産業界や建設関連のコンサルティング業務など、施工管理の知識を活かして働ける分野もあります。施工管理以外の仕事に興味を持ったら、まずは自身の経験を整理し、どの職種で活かせるのかを具体的に考えることが大切です。
転職を検討する際は、業界の情報を収集し、自分の適性やキャリアの方向性を明確にすることで、後悔のない選択につながります。
施工管理を辞めずに続けられる理由
施工管理の仕事は大変な面もありますが、その分やりがいや魅力を感じ続けている人も多くいます。
ここでは、施工管理の仕事を辞めずに続けられる理由について紹介します。転職するか悩んでいる人は、ぜひご確認ください。
1. 達成感がある
施工が完了したときの達成感は、施工管理の魅力の1つです。
施工管理の仕事は現場での調整や問題解決などの成果が、建物として目に見える形で残ります。長い期間をかけて自身が担当した建物が完成した瞬間は、大きな達成感を得られるでしょう。
施工管理は仕事に対する責任感やプレッシャーが大きく、多くの関係者との調整を重ねていく必要があります。特に複雑なプロジェクトを担当した後は、達成感や開放感、さらには自身の成長も実感できるでしょう。
2. 人や社会に貢献している実感が得られる
建築の仕事は、人々の生活に直接影響を与えるため、社会に貢献しているという実感を得られやすい仕事です。
住宅や道路、商業施設など、自分が関わった建物が実際に使われている場面を見ると、施工管理の仕事が社会に役立っていることを改めて実感できるでしょう。
また老朽化したインフラの改修や災害時の復旧工事など、緊急かつ重要なプロジェクトに携わることで、多くの人に喜ばれる仕事でもあります。こうした経験が、施工管理の仕事に対する自信や誇りにつながります。
3. 高収入を得られる
施工管理は現場をまとめる立場のため、比較的高収入が期待できる職種です。厚生労働省の産業別に見た賃金の資料によると、日本人の給与所得者の平均年収は約457万円ですが、建設業界の平均年収は約521万円と全体の平均よりも高い水準にあります。
さらに、大手ゼネコンなどでは年収700〜1,000万円となるケースもあり、経験やスキルに応じて収入が上がる傾向があります。 資格を取得し、専門性を高めることで、さらなる昇給も期待できるでしょう。
4. キャリアアップが期待できる
施工管理は、経験やスキルの積み重ねによってキャリアアップが見込める仕事です。より大きなプロジェクトの現場経験を積み重ねて、昇進や昇給のチャンスをつかむことも可能です。
実績を重ねることで、現場監督から管理職への昇進が可能になり、さらに経営層を目指す道も開かれます。また、施工管理の経験と資格を活かして独立・起業し、個人事業主として活躍する選択肢もあります。
【後悔しない】施工管理の仕事を辞めたいと感じたときにやるべきこと
施工管理の仕事を辞めたいと感じたら、まず冷静に考え、後悔しない選択をすることが大切です。
ここでは、施工管理職を辞める前にやるべき5つのステップについてご紹介します。転職してから後悔しないためにも、自分の気持ちを整理して、行動に移しましょう。
1. 辞めたい理由を明確にする
辞めたい気持ちが一時的なものか、それとも根本的な問題なのかを整理しましょう。「きつい」「つらい」といった感情面だけではなく、具体的に何が原因なのか(人間関係・業務内容・職場環境など)、どういった点が自分に合わないと思うのかを分析することが大切です。
これまでの経験を振り返り、不満を感じた出来事を人間関係や業務内容、職場環境などの項目に分けて洗い出しましょう。細かく整理することで、本当に辞めるべきか、または働き方を変えれば解決できる問題なのかが見えてきます。
関連記事:建築施工管理がきついのはナゼ?仕事のきつさを乗り越える4つの方法
2. 今の職場で改善できることはないか考える
転職をする前に、今の職場で改善できることはないかを考えましょう。例えば、以下の対策を講じることで、働き方が改善される可能性があります。
- 上司に相談して業務量を調整してもらう
- 人事部に相談し、他部署への異動を検討する
- 勤務体系を見直し、負担を軽減する方法を探る
転職をすると現在の悩みから解放されるかもしれませんが、新たな職場でも別の悩みが生じる可能性があります。そのため、まずは社内でできる改善策を試し、それでも解決しない場合に転職を検討しましょう。
3. 辞めた後のキャリアプランを具体的に考える
仕事を辞める前に、退職した後のキャリアプランを具体的に考えましょう。施工管理の経験を活かして同じ建築業界で働くのか、他業界へ転職するのか、まったく異なる未経験の分野に挑戦するのかによって、必要なスキルや準備が変わります。
まずは、これまでの経験やスキルを棚卸しし、強みや実績を明確にしましょう。経歴が明確になれば、履歴書や職務経歴書もスムーズに作成できるだけでなく、面接でも自信を持ってスキルや強みを伝えられるようになります。
4. 家族や友人など信頼できる人に相談する
施工管理の仕事を辞めるか迷ったときは、家族や信頼できる友人などに相談することが大切です。一人で考えていると、視野が狭くなり、極端な結論に至ることがあります。しかし、第三者に話すことで新たな視点を得られたり、解決策が見つかったりする可能性があります。
また、悩みを話すだけでも気持ちが軽くなり、前向きな行動を起こしやすくなるかもしれません。会社の上司や同僚に相談しにくい場合は、家族やパートナー、親しい友人など、信頼できる人に話してみましょう。
5. 転職エージェントに相談する
転職するか悩んでいるときは、転職エージェントのキャリアアドバイザーに相談するのがおすすめです。転職のプロに相談することで、自分の市場価値や適性に合ったキャリアプランのアドバイスを受けられます。また豊富な求人情報の中から、自分に合った案件を紹介してもらえるため、効率的に転職活動を進めることができます。
転職エージェントを選ぶ際は、転職の支援実績が豊富で、自分の希望に合う求人を多く扱っているかをチェックしましょう。
ベスキャリ建設では、建設業界に精通した専任のアドバイザーがあなたの転職活動を丁寧にサポートします。転職やキャリアに関するお悩みを抱えている方はぜひお気軽にご相談ください。
潰しが効かない?施工管理を辞めるのにベストなタイミング
施工管理は現場をまとめる立場であり、納期や安全、品質に対して大きな責任を負う仕事です。そのため、「途中で辞めると迷惑がかかる」「引き継ぎが難しい」といった事情から、簡単に辞めづらいと感じる方も多いでしょう。
また、業務が特殊なため、いざ転職しようとしても“潰しが効かない”と不安になるケースも少なくありません。だからこそ、退職のタイミングは慎重に見極めることが重要です。プロジェクトの区切りや繁忙期を避けた時期を選び、迷惑を最小限に抑えながら次のステップに進む準備を整えましょう。
- プロジェクトが終了したタイミング
- 業界の閑散期
どちらも業務がひと段落しており、引き継ぎをスムーズに進めやすい時期だといえます。
ただし、会社によってベストな時期は異なるため、早めに上司へ相談することが大切です。また、上司に退職の意向を伝えた後で、新しい業務を受けないように調整することが重要です。
施工管理を辞めた後の選択肢
施工管理の仕事を辞めた後のキャリアを事前に考えておくことで、スムーズに次のステップへ進めます。辞めた後の選択肢として、3つの方向性があるため、自分の興味や強みを活かせるキャリアをを目指しましょう。
建設業界の別の職種
施工管理として勤めた経験を活かして、建設業界の別の職種に転職する道もあります。建設業界には、以下のような職種があり、施工管理の仕事で培ったスキルを活かして活躍できる可能性があります。
職種 | 仕事内容 |
---|---|
積算 | コスト計算や予算管理 |
設計 | 建築物のデザインや構造設計 |
CADオペレーター | 設計図の作成・修正 |
営業・企画職 | 建設プロジェクトの提案・調整 |
同じ業界での転職なら、施工管理の知識や経験を活かしやすいため、新たな分野でもスムーズに適応できるでしょう。
異業種への転職
建設業界から離れて、異業種へ転職するのも選択肢の1つです。例えばIT業界では、施工管理の仕事で培った進行管理能力やチームマネジメント、論理的思考力などを活かせる職種が多くあります。
まずは、自分の興味がある分野や、これまでの経験・スキルを整理してみましょう。過去の経験を棚卸しすることで異業種でも活かせる強みが見つかり、適した職種を探しやすくなります。
資格を生かせる職種
施工管理の資格を活かせる転職先も検討してみましょう。例えば、以下のような職種では、施工管理で取得した資格が強みになる場合があります。
職種 | 平均年収 | 仕事内容 |
---|---|---|
建築設計技術者 | 約633万円 | 住宅・学校・オフィスビル・工場・ホテルなどの建築物について調査・設計を担当 |
土木設計技術者 | 約604万円 | 建築物の壁や床などに、モルタルや漆喰を塗り、仕上げる作業を担当 |
プラント設計技術者 | 約612万円 | プラントの基本設計、詳細設計等を担当 |
施工管理の資格を活かせる転職先として、建築設計技術者、土木設計技術者、プラント設計技術者などが挙げられ、これらの職種では、施工管理で培ったスキルや資格が強みとなり、年収600万円以上の水準が期待できます。
まとめ:施工管理を辞めたいと思ったらその理由から考えよう
施工管理の仕事を辞めたいと思う理由や、辞める前にやっておくべきことをご紹介しました。施工管理は業務量が多く、責任が大きい仕事であるため、「辞めたい」と感じることもあるかもしれません。しかし、達成感や社会へ貢献している実感を得られるなど、やりがいのある仕事でもあります。
まずは辞めたいと思う理由を整理し、今の職場で改善できるポイントがないかを確認してみてください。それでも、状況が変わらず、辞める決断をした場合は、転職も選択肢の1つとして考えましょう。
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