建設現場で重要なポジションである施工管理職は、長時間労働で休みが少ないなどの過酷な条件下で働くというケースがあり得ます。そこで、建設業界の労働環境を改善するために、国土交通省が打ち出したのが「建設業働き方改革促進プログラム」です。建設業界に特化した働き方改革ですが、具体的な内容を把握していない方も多いでしょう。今回は、施工管理職の働き方と働き方改革の関連性、建設業働き方改革促進プログラムの内容と懸念点について解説します。
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■以前の施工管理は休めない・長いといった働き方が普通
施工管理職の仕事は、休みが少なく、労働時間が長いことが当たり前という認識がありました。なぜ施工管理職が忙しいのかというと、仕事内容が多岐に亘るため、仕事量が必然的に多くなることが主な要因です。
施工管理職の仕事内容は、おおまかに分けると以下の4つの分野があります。
・工程管理…納期を遵守するためのスケジュールを管理する
・品質管理…クライアントが求める品質や、耐震性などの品質基準を管理する
・原価管理…決められた予算内で建物を完成させるため、資材や原価を管理する
・安全管理…事故なく建物を完成させるため、現場での事故防止対策を管理する
これらの仕事は建設現場で行うだけでなく、書類の仕事も含まれるため、事務所に帰って事務作業をする必要があります。現場と事務所の双方での業務が、労働時間が長くなる大きな要因です。
次の章で、これらの問題を解決するために国土交通省が新たな政策を開始したので、その施策について紹介していきます。
■国土交通省が「建設業働き方改革加速プログラム」を策定
国を挙げて取り組んでいる働き方改革ですが、建設業界では国土交通省を中心とした「働き方改革加速プログラム」が策定されました。このプログラムは、出勤日数と労働時間、休日の日数を改善し、建設業界を担う労働者を確保するという目的も含まれています。
このプログラムの具体的な改善策は、次のものがあります。
◇長時間労働の見直し
長時間労働の見直しに対する取り組みは、完全週休2日制の導入と、適正な工事設定の推進の2つが中心です。
完全週休2日制の導入は公共事業の工事から開始し、それを順次拡大することを目標にしています。週休2日制の導入が遅れていたのは、工事期間の延長によって人件費などの経費がかさむことが要因の1つです。
そこで、労務費や共通仮設費などの経費を計上する際に、新たな補正係数を乗じることで、経費の問題を解決する取り組みを行っています。
また、長時間労働の要因であった短い工期を見直すため、発注者と適正な工期で契約をするという内容のガイドラインも発表しています。
◇給与・社会保険
建設の高い技能を持つ作業員を適正に評価し、給与に反映させる「建設キャリアアップシステム」を稼働しています。また、高い技能を持つ作業員を雇用する企業も評価することで、結果的に企業が工事を受注しやすくなり、売上と給与がアップする効果も期待されています。
また、社会保険に未加入の建設作業員が未だに多いため、工事の発注は社会保険加入の企業に限定する、建設業の許可と更新を認めない、という取り組みを構築中です。
◇生産性の向上
建設許可等の手続きや書類の作成など、効率化できる業務にITを導入する取り組みに力をいれています。限られた人材の中で効率よく業務を行うことで、人手不足を解消する効果も期待できるでしょう。
◇施工管理職への影響
国土交通省が「建設業働き方改革加速プログラム」を策定した背景には、施工管理職の過酷な労働条件を改善するべき、という意図が伺えます。
これらの取り組みが実現すれば、施工管理職の仕事が効率化できるため、残業を減らすことに繋がります。現場で行う仕事の他に、書類作成が多くある施工管理職では、IT化の推進で工事書類を作成する負担も軽減できるでしょう。
また、休日の問題も週休2日制で解消できるため、施工管理職の離職を防止する効果も期待できます。
■日当で働く人にとっては不都合?建設業働き方改革加速プログラムの懸念点
建設業働き方改革加速プログラムは、月給制の正社員にとっては好都合な政策ですが、日給で働く人にとっては不都合な事情があります。
なぜなら、日給制は働いた日数だけ稼ぐことができるので、週休2日制が導入されると、必然的に給料が減ってしまうからです。たとえば、4週4休で働いていた場合は年間300日ですが、週休2日制になると年間250日と、50日分もの差があります。給与が減ってしまう上に、日給制の作業員が退職するという問題に発展する可能性もあり得るでしょう。
■施工管理職で良い働き方をするポイント
施工管理職は仕事量が多く忙しいのは確かですが、給与や休日などの待遇面に配慮した企業も存在します。そこで、施工管理職でより良い働き方をするためには、次の4つのポイントがあります。
◇地方で勤務する
公共工事を含めた工事が多いのは、首都圏などの大都市に集中する傾向があります。そのため、仕事量が比較的に少ない、地方で働くという選択肢も有効です。
◇会社の規模が小さいところを選ぶ
会社の規模が小さいところでは、受注する現場の規模も小さい傾向があります。現場が小規模だと忙しすぎないことが多いため、比較的に働きやすい環境であるといえるでしょう。
◇会社にとって必要な存在となる
仕事がバリバリできる社員は、会社に貢献してくれる必要な人材です。つまり、会社側が手放したくない社員になることで、給与などの就労条件の交渉がしやすくなります。そこに至るまでには、仕事を誰よりも早く覚える、必要な資格を積極的に取得するなどの努力が必要です。
◇派遣や契約社員も視野に入れる
施工管理職=正社員というイメージがありますが、派遣社員や契約社員でも施工管理職として働くことも1つの方法です。
派遣社員は休日や残業量、転勤の有無など、希望に沿う職場を紹介してくれるので、より良い環境で働くことができます。また、残業代も1.25倍で支給されるので、待遇面のメリットが大きいのも魅力です。
■まとめ
施工管理職を含めた建設業界において、働き方改革の取り組みが推進されています。長時間労働や休日数、給与や社会保険などが改善されると、新たな人材が入社することで人手不足の解消も期待できるでしょう。仕事の効率化によって書類作成などの負担も軽減されるため、より働きやすい環境に近付きつつあるといえます。また、より良い働き方を求める場合、地方での就職や派遣社員など、働き方を自ら変えることも有効です。