建築士は、建物の設計や工事監理を行う国家資格で、住宅から超高層ビルまで、社会の安全とデザインを支える重要な役割を担っています。
近年の法改正により、資格取得のプロセスは大きく変化し、実務経験がなくても試験に挑戦できるようになりました。
「学校で勉強しながら受験し、その後の実務経験で免許登録する」という新しいルートが一般的になりつつあります。
この記事では、建築士の種類や試験の仕組み、必要な実務経験、免許登録までの流れをわかりやすく解説します。
建築士になるには?まず知るべき3つのポイント

ここでは、建築士を目指す人が最初に知っておくべき「資格の種類」「試験と実務経験の仕組み」「免許登録の条件」の3つについて解説します。
1. 建築士には「3つの種類」がある
建築士資格は「一級建築士」「二級建築士」「木造建築士」の3つに分類されます。
中でも一級建築士は扱える建物に制限がなく、超高層ビルや公共施設など、すべての建築物の設計や工事監理が可能です。
一方、二級や木造建築士は戸建住宅や小規模な建物が主な対象となり、扱える範囲が限定される点が大きな違いです。
2. 建築士試験は卒業後すぐ受験できる
2020年の建築士法改正により、建築士試験は「卒業後すぐに受験できる」制度へ変更されました。
これにより、大学や専門学校で指定科目を修了すれば、実務経験がなくても一級・二級・木造建築士の試験に挑戦できます。
建築士試験は、実務経験がなくても受験できます。まず試験に合格し、その後に必要な実務経験を積めば、免許登録が可能です。
出典:建築士試験|国土交通省
3. 「試験に合格=建築士」ではない
建築士試験に合格しても、すぐに「建築士」と名乗れるわけではありません。
免許登録には、学歴に応じた実務経験(例:大学卒なら2年以上など)を証明し、国または都道府県の名簿に登録する必要があります。
つまり、「試験合格+実務経験+登録」の3つの要素が揃って初めて、建築士として設計や工事監理の業務に従事できるようになります。
一級建築士の資格を取得する際の流れ
ここでは、一級建築士を目指す人向けに、受験資格の確保から試験、実務経験、免許登録までのステップを法改正後の最新ルートに基づいて解説します。
【STEP1】指定科目の修得・卒業
大学・短大・高専・専門学校などで、国土交通大臣が指定する建築関連科目を修めて卒業することで受験資格が得られます。
ここで学ぶ科目は、建築計画・構造力学・建築法規など、建築士試験でも必須となる基礎知識につながっています。
※2020年の法改正により、卒業と同時に受験資格が得られる(実務経験不要)点が重要です。
出典:建築士法の一部を改正する法律等の施行について(技術的助言)
出典:建築士試験の受験資格が変わります!公益財団法人 建築技術教育普及センター
【STEP2】一級建築士試験に合格
試験は年1回実施され、「学科試験」と「設計製図試験」の2段階形式です。
単に知識だけでなく、図面作成力や課題分析能力など、実務に直結する総合力が問われます。
| 試験区分 | 内容 |
|---|---|
| 学科試験(7月頃) | 4肢択一式/5科目(計画・環境設備・法規・構造・施工)/合格率約15〜23% |
| 設計製図試験(10月頃) | 学科合格者のみ受験可能/課題に基づき6.5時間で図面作成/合格率約33〜35% |
学科+製図を通過した場合、総合合格率は例年10%前後(令和6年は約8.8%)と非常に難関です。
【STEP3】実務経験の充足(登録要件)
免許登録のためには、卒業後に次の年数以上の実務経験が必要です。
実務経験には設計や監理だけでなく、建築物の調査・図面作成補助などの幅広い業務が含まれます。
| 最終学歴(指定科目修了者) | 必要経験年数 |
|---|---|
| 大学(4年制) | 2年以上 |
| 短大・高専(3年) | 3年以上 |
| 短大・高専・専門(2年) | 4年以上 |
この経験は、試験合格後だけでなく、試験前の勤務や学生時代のインターンなども合算可能です。
【STEP4】免許登録・交付
「試験合格」と「実務経験」の両方を満たすと登録申請ができ、一級建築士名簿に登録されて免許証が交付されます。
正式に免許証が交付された時点で、初めて「一級建築士」と名乗り、業務独占資格として働くことができます。
【高校生・社会人・学歴なし】建築士を目指せる3つのルート

建築士になるためのルートは、現在の学歴や状況によって大きく分けて3つのパターンがあります。
2020年の法改正により、「実務経験は試験合格後でもOK」となったため、学生や若手社会人にとって、資格取得のハードルは以前よりも下がっています。自分に合った最短ルートを見つけ、計画的に建築士を目指しましょう。
【高校生向け】学生の最短ルート
高校卒業後に建築系の学校へ進学するのが、建築士への最短ルートです。
なかでも、4年制大学(建築学科など)への進学は、一級建築士を最短で目指せる王道コースです。
指定科目を修了して卒業すれば、実務経験ゼロで一級建築士試験を受験できます。学生時代の知識が鮮明なうちに最難関試験へ挑戦でき、大手ゼネコンや設計事務所など、専門性の高い就職先を狙える点も魅力です。
一方、短大や専門学校(2〜3年制)は、卒業と同時に二級建築士・木造建築士の受験資格を得られます。まずは二級を取得し、現場で経験を積みながら一級へステップアップする現実的な道として人気です。
ただし、一級建築士の免許登録には学歴に応じた実務年数が必要となるため、早めにキャリア計画を立てることが重要になります。
【社会人向け】未経験から建築士を目指す最短ルート
社会人が未経験から建築士を目指す場合は、働きながら建築系の学校に通い、受験資格となる指定科目を取得するのが最短です。
夜間・通信制の大学や専門学校、職業能力開発校なら、仕事と両立しながら学べます。
ただし、日建学院や総合資格学院などの予備校は「試験対策のみ」で、受験資格(学歴)は得られない点に注意が必要です。
【学歴なしで目指す】実務経験から建築士を取得する方法
建築系の学校を卒業していなくても、現場での実務経験を積むことで建築士になることができます。7年以上の実務経験があれば、二級建築士の受験資格を取得可能です。
二級に合格・登録した後は、学歴に関係なく一級建築士試験へ挑戦できます。
一級の免許登録には、二級として4年以上の実務経験が必要となるため、経験を積みながら計画的に進めることが重要です。
一級・二級・木造建築士の違い【比較表】
建築士の資格は、扱える建物の規模・構造・用途によって3種類に分かれます。
また、2020年(令和2年)の法改正により、試験は実務経験なしで受験できる制度となり、学生や社会人でも早期の挑戦が可能になりました。
ここでは、3つの建築士資格の違いを比較表で整理し、試験制度・業務範囲・合格率・就職先の特徴まで詳しく解説します。
| 比較項目 | 一級建築士 | 二級建築士 | 木造建築士 |
|---|---|---|---|
| 扱える建物 | 【無制限】すべての規模・構造・用途 例:高層ビル・公共施設・商業施設 |
【中・小規模】住宅や小規模建物 ※条件内ならRC・鉄骨も可 |
【小規模木造のみ】 2階建以下・延べ300㎡以下の木造 |
| 受験資格(最短) | 大学・高専(指定科目)卒で即受験可 | 大学・短大・高校(指定科目)卒で即受験可 | 二級建築士と同様 |
| 免許登録に必要な実務 |
2年以上 |
0〜2年以上 (学歴により異なる) |
0〜2年以上 (学歴により異なる) |
| 合格率(平均) | 約10% (令和6年:8.8%) |
約24% | 約36% |
| 主な就職先 | ゼネコン・組織設計事務所・官公庁 | 工務店・ハウスメーカー・設計事務所 | 地場工務店・木造専門事務所 |
1.受験資格と実務経験の違い
かつては「実務経験がないと受験できない」制度でしたが、2020年の法改正により、指定科目を修了し卒業すれば、実務経験ゼロで受験可能になりました。
- ✓ 大学等で指定科目を修めて卒業 → 即受験→合格→2年の実務で登録
- ✓大学・短大・高専卒の場合、実務経験ゼロで免許登録まで可能
※高校卒は、登録時に2年以上の実務経験が必要。 登録時までに必要な実務経験を満たし、免許証が交付されて初めて建築士となります。
2.業務範囲の違い
建築士は等級ごとに「どこまで設計・監理できるか」が明確に分かれています。
特に一級は扱える建築物が幅広く、二級・木造は対象が限定されます。以下では、それぞれの業務範囲の違いを比較します。
| 区分 | 説明 |
|---|---|
| 一級建築士:すべての建築物に対応(無制限) | 高層ビル・病院・学校・商業施設など、規模・構造・用途の制限なし。 特に、高さ13m超・延べ500㎡超などの建築物は一級建築士の独占領域です。 |
| 二級建築士:住宅~小規模建築の専門 | 戸建て住宅はもちろん、一定の条件内でRC造(鉄筋コンクリート)や鉄骨造も設計可能。 地域密着型の設計業務に強みがあります。 |
| 木造建築士:小規模な木造専門 | 2階建以下・300㎡以下など、小規模木造に限定。 神社・寺院・町屋など、木造の専門性を活かす現場で需要があります。 |
3.試験難易度と合格率の違い
3つの試験は、いずれも「学科試験+設計製図試験」の2段階構成です。
| 資格 | 合格率・特徴 |
|---|---|
| 一級建築士 | 極めて難関。令和6年の総合合格率 8.8% |
| 二級建築士 | 20%台で安定。難易度は中程度 |
| 木造建築士 | 30%台と比較的高いが受験者は減少傾向 |
建築士の平均年収は?1,000万円以上も可能?

建築士の年収は、勤め先や経験、独立の有無によって大きく変わりますが、“値下げ競争”にならないよう、国が報酬の目安(国土交通省告示15号)を定めていることが特徴です。
さらに、一級建築士は会社の営業所に必ず配置しなければならないため、設計事務所はもちろん、ゼネコンや工務店などから常にニーズがあります。
平均年収は600〜700万円台が一般的で、大手勤務や独立できれば1,000万円以上も狙える仕事です。
まとめ
建築士は、建物の設計・工事監理を担う国家資格であり、一級・二級・木造の3区分に分かれます。
求められる役割は同じでも、扱える建築物の規模や用途が異なるため、キャリアや働き方に合わせて選ぶことが重要です。
また、現在は試験を先に受け、実務経験は免許登録時までに満たせばよい制度となり、最短ルートでの取得も可能です。将来の働き方や専門分野をイメージし、自分に合った資格取得プランを考えてみましょう。