土木施工管理技士は、施工管理技士という国家資格の1つです。建設工事に欠かせない施工管理の仕事ですが、土木に特化したこの資格はどのような仕事を行うのか、ご存じない方も多いのではないでしょうか?今回は、土木施工管理技士の仕事内容と、建設施工管理との違いについて解説します。
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■土木施工管理技士とは?
土木施工管理技士とは、主に土木工事の施工管理をする仕事です。土木工事と一口にいっても、以下のようにさまざまな種類があります。
・河川工事、上下水道工事、ダム工事、海岸工事
・道路工事、橋梁工事、トンネル工事
・土地区画整理工事、災害の復旧工事
これらの工事現場の施工管理業務に加え、用地確保や周辺住民の説明など、業務は多岐に亘ります。土木施工管理技士とは、いわば土木工事分野のスペシャリストといえる資格です。
そこで、土木施工管理技士と建築施工管理の違い、気になる年収や仕事のきつさといった疑問について解説します。
◇土木施工管理技士と建築施工管理の違い
土木施工管理技士が携わる、橋や道路、ダムなどの事業は建築業以外の構造物です。人々が生活するためのインフラ整備を行うことが、土木工事の重要な意義といえます。
一方、建築とは、屋根や壁を持つビルやマンション、事務所、倉庫、スポーツスタジアムなどを新築することが定義です。施工管理技士として現場の管理を行うのは同じdすが、工事の内容が異なるのが両社の明確な違いになります。
◇土木施工管理技士の平均年収
土木施工管理技士は1級と2級があり、それぞれで平均年収が異なります。1級では「400万円~700万円台」と比較的高くなっており、ボーナスのほかに残業代が多いことが関係しているようです。
2級では全体の平均年収といわれる、「300万円~500万円」の層が多いようです。1級は業務範囲が広いこともあり、2級との間で差が生じるのが一般的です。ただし、20代~40代と比べると、50代以上の平均年収は700万円台と高収入になる傾向があります。
◇土木施工管理技士はきついと言われている?
土木工事は基本的に屋外での作業になるため、天候による影響を受けやすくなります。体力が必要になるのはもちろん、工期の遅れによるスケジュール管理や休日出勤などが大変な部分といえるでしょう。
また、図面作成や材料の手配、役所に提出する書類などの事務作業も、現場での業務と並行して行う必要があります。連日帰宅が遅くなることも珍しくないので、気力、体力ともにハードな仕事です。
■土木施工管理技士の仕事内容と1日の流れ
土木施工管理技士の基本的な仕事内容は、次のものが挙げられます。
・土木工事の施工計画を作成
・現場での施工管理(安全、品質、費用、工程など)
・建設用地の確保
・役所への手続き
・周辺住民の説明
・書類作成全般
このような幅広い業務を行う土木施工管理技士は、1日の仕事のスケジュールを次のように組んでいます。
◇土木施工管理技士の1日の流れ
8:00 朝礼…体操や作業内容の確認、夏や冬は体調面の注意喚起、安全作業の徹底などを作業員に伝える。
8:30 作業開始…重機の使用前点検、危険なものを排除してから作業に入る。
10:00 休憩…基本的に作業員と同じ時間に休憩を取る
10:20 作業を再開
12:00 昼食
13:00 作業再開…現場の進捗をチェックする傍ら、翌日以降の重機や資材の手配を行う
15:00 現場から事務所に戻る…終日現場にいない際は、職長に指示をまかせ、見積書や注文書、申請などの事務作業を行う。
17:00 終礼…現場作業終了後、進捗や問題点をチェックして翌日の指示を行う。また、翌日の天候を確認し、事務作業が終われば帰宅となる。
朝から午後過ぎまでは現場で進捗をチェックし、それ以降は事務作業を行うのが土木施工管理技士の基本的なスケジュールとなります。
■土木施工管理技士の資格取得方法
土木施工管理技士の1級・2級は、試験形態や役職、実務経験年数に違いがあります。1級と2級の概要と、それぞれの取得方法は次の通りです。
◇土木施工管理技士1級と2級の違い
1級に合格すると「監理技術者」となり、2級では「主任技術者」になれるのが明確な違いです。
監理技術者とは、現場全体の指揮官であり、請負代金の総額が4,000万円を超える大規模な工事現場に1人を配置する義務があります。一方、主任技術者は作業工程ごとの責任者に該当するため、業務できる範囲が狭くなるのが特徴です。
また、国家資格である土木施工管理技士は、土木や建築などの学科を卒業、および実務経験年数による受験資格、試験内容が異なります。その点を踏まえ、1級と2級の取得方法は次の通りです。
◇土木施工管理技士2級の取得方法
土木施工管理技士2級の受験資格は、「最終学歴・実務経験年数」で以下のいずれかに該当する必要があります。(※指定学科:建築学科・土木工学科・農業土木科・森林土木科・都市工学科など)
・大学、専門学校(高度専門士)…指定学科卒:1年以上、他学科卒:1年6ヶ月以上
・短大、高専、専門学校(専門士)…指定学科卒:2年以上、他学科卒:3年以上
・高校、中学、専門学校(専門士以外)…指定学科卒:3年以上、他学科卒:4年6ヶ月以上
・その他…学科問わず8年以上
また、前期と後期の学科試験と実地試験があり、学科に合格してから実地試験を受験します。学科試験では四肢択一のマークシート方式で、「土木一般・専門土木・法規・共通工学・施工管理法」が問われます。
実地試験は記述式で、「施工経験・土木・コンクリート」の必須問題と、「施工管理法・品質管理」、「施工管理法と安全管理・工程管理」の選択問題を解く方法です。
◇土木施工管理技士1級の取得方法
1級の実務経験年数の受験資格は次の通りです。
・大学、専門学校(高度専門士)…指定学科卒:3年以上、他学科卒:4年6ヶ月以上
・短大、高専、専門学校(専門士)…指定学科卒:5年以上、他学科卒:7年6ヶ月以上
・高校、中学、専門学校(専門士以外)…指定学科卒:10年以上、他学科卒:11年6ヶ月以上
・その他…学科問わず15年以上
学科試験、実地試験の出題方法と試験科目は2級と同じですが、出題数が2級の約2倍と難易度が高くなっているのが特徴です。また、実地試験の選択問題では、コンクリートの養成、盛土の施工、安全対策、型枠および支保工の取り外しなど、出題区分が明記されているのが2級との違いです。
■まとめ
土木施工管理技士は、主に土木工事の施工管理を行う国家資格で、事業内容と仕事内容が多岐に亘ります。大変な部分は当然ありますが、道路や水道などのインフラ整備や震災復興など、人々の暮らしを支えるやりがいのある仕事といえるでしょう。
また、土木施工管理技士試験は、基本的に現場指導の実務経験が必要です。指定学科を卒業していると有利ではありますが、経験を積めば学歴関係なく土木施工管理技士として活躍できます。学科試験と実地試験が必要な難しい試験ですが、資格取得に挑戦する価値は高いでしょう。