建設業界とひと口にいっても、工事の種類と職種は多岐にわたります。工事現場の工程や安全を管理する施工管理職において、空調設備施工管理という新しい職種があることをご存じでしょうか?空調は建物を快適に使うために欠かせない工事であり、これから建設業界で働くうえでおすすめの職種です。
しかし、空調設備設置工事は具体的にどのような仕事をするのか、わからない方も多いかもしれません。今回は、空調設備施工管理の仕事内容とおすすめする理由、空調設備施工管理という職業につく方法について解説します。
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■空調設備業界がおすすめできる理由
空調設備業界は、建設業界の中でも比較的新しい業種といわれています。なぜなら、エアコンをはじめとする空調設備が誕生したのは40年ほど前と、業界的に歴史が浅いためです。
そして、空調設備は建物に必ず設置されるため、仕事の需要が高く将来性のある仕事です。会社の将来性の指標であるROA(総資本営業利益率)において、建設業界は「3.7%」、空調設備業界は「4.3%」というデータがあります。ROAは数字が高いほど利益を上げている証拠であり、空調設備業界の将来性の高さがうかがえます。
また、空調設備業界で働く場合、一般的な建設現場よりも働きやすいというメリットがあります。例えば、建築や土木のように重い資材を運ぶことが少ない、屋内作業がメインなので暑さや寒さの影響を受けにくい、高所作業が少ない、など危険性が少ないのが特徴です。
ただし、空調設備業界の職場がすべて同じ状況というわけではなく、現場によって異なる場合もあることを心得ておきましょう。
■さまざまな設備を取り扱う空調設備施工管理の仕事内容
空調設備の種類を踏まえ、空調設備施工管理の基本的な仕事内容を見ていきましょう。
◇空調設備はたくさんある!
空調設備というと、エアコンのイメージが強いかもしれません。しかし、建設における空調設備は、熱源設備、熱搬送設備、空気調和設備の3種類が存在します。
・熱源設備(熱を生む設備)…ボイラー・ヒートポンプ・蓄熱槽・冷凍機・吸収冷温水機
・熱搬送設備(作った熱を移動する設備)…配管・ポンプ・送風機・ダクトなど
・空気調和設備(熱を使いやすい状態に中和する設備)…加湿器・冷却コイル・加熱コイル・エアフィルターなど
また、空調設備が使われる場所は、オフィスビル、学校、工場、病院など、大規模な建物が主流です。
◇空調設備の工事を管理
3種類の空調設備は、必要に応じて組み合わせて設置します。空調設備を設置するにあたり、工事計画の策定や予算の管理、工事現場の安全な作業、空調を問題なく使える品質を保つなど、空調設備工事の全体的な管理をおこなうのが、空調設備施工管理の仕事です。実際に工事作業に携わるよりも、現場で進捗を確認したり、指導監督したりすることがおもな仕事になります。
■空調設備施工管理の魅力とやりがいについて
将来性の高い空調設備施工管理ですが、仕事そのものにも魅力とやりがいがあります。
空調は建物を使う、または暮らす人々が、快適に過ごせるように環境を整えるという重要な役目があります。その設備工事を全体で管理するのは、とてもやりがいのある仕事といえるでしょう。
また、空調設備に欠かせない配管は、建物の形状を考慮して計画を立てなければなりません。プラモデル作りやパズルに似た面白さと、ものづくりの楽しさを味わうことができます。空調設備はさまざまな建物に必要なものであり、施設の裏側が見られることも、空調設備施工管理のもう一つの魅力でしょう。
空調設備施工管理のさらなる魅力は、高収入を狙えることです。2でも大学初任給程度の給料が得られるうえに、経験を積めばさらなる収入アップも期待できます。給料が上がりにくいといわれる現代において、空調設備施工管理として働くメリットは大きいといえるでしょう。
■空調設備施工管理をするにあたってどんな資格が必要なの?
空調設備施工管理の仕事に携わりたい場合、どのような資格が役立つのでしょうか?そこで、代表的な2つの資格の概要と、資格を取得するメリットについて見ていきましょう。
◇必要な資格は「管工事施工管理」と「電気工事士」
空調設備施工管理になれる資格は、「管工事施工管理技士」と「電気工事士」です。
管工事施工管理技士とは、空調設備の設置工事における施工管理の技術を証明する国家資格です。管工事は、冷暖房設備やダクト工事、ガス配管工事など、空調設備工事と関係の深い仕事を指します。
電気工事士とは、ビルなどの施設にある電気設備工事に携わることができる資格です。空調設備は電気系統の知識が必要になることが多く、電気設備工事ができるスキルがあると仕事の幅が広がります。
◇資格を取るメリット
管工事施工管理技士は1級と2級があり、1級は大規模な建設現場の専任技術者、工事現場に配置する主任技術者や監理技術者になることが可能です。2級では中小規模の工事現場における主任技術者に留まるため、1級を取得した方がより規模が大きい現場に携わることができます。
一方、電気工事士には第1種と第2種があり、携わる工事内容が以下のように異なります。
・第1種電気工事士…工場やビルにおける、最大電力500kw以内の電気工事(第2種の範囲も含む)
・第2種電気工事士…一般住宅や小規模店舗における、600ボルト以内の受電設備工事
管工事施工管理技士と同様に、第1種の方が大規模な電気工事ができるため、転職や就職に有利になります。空調設備施工管理に携わるうえで、1級や第1種を取得するとキャリアアップにつながるでしょう。
◇試験内容や難易度
管工事施工管理技士を受験する場合、学歴と実務経験年数をもとにした受験資格が定められています。中学~大学の学歴と建築系などの指定学科卒の有無により、実務経験年数に幅があります。1級を最短で受験できるケースでは、大学を指定学科で卒業した人で3年以上、2級では同条件で1年以上の実務経験が必要です。1級と2級で実務経験年数が異なるので、受験前に必要な年数を満たしているか確認しましょう。
そして、試験ではマークシート方式の学科試験と、記述式の実地試験を、順番に合格する必要があります。1級の合格率は学科で40%前後、実地試験は60%前後です。2級では学科が約60%、実地が約40%と、試験によって難易度が異なるのが特徴です。施工管理技士は建築や土木などの職種別に分かれており、その中でも管工事は比較的難易度が低いといわれています。
一方、電気工事士の場合、第1種、第2種ともに受験資格がなく、誰でも受験することが可能です。2級は試験に合格すれば免許をすぐに申請できますが、1級の場合は「5年以上の実務経験」が必要になります。
そして、電気工事士の試験は、筆記試験と技能試験が課されます。筆記試験の出題傾向は、過去問と傾向が似ているので対策しやすい試験です。一方、技能試験は問題の配線図をもとに、ケーブルの接続やボックスの組み立てといった作業をおこないます。問題の候補が試験前に公表されるので、どの問題が出ても対応できるように練習を積むことが大切です。
第1級の合格率は筆記試験で約50%、技能試験は約60%前後で、2級の筆記は約60%、技能試験は約70%と比較的難易度が低い試験です。しっかり勉強に取り組めば、経験がなくても合格できる可能性は十分あるでしょう。
■まとめ
建設業界の中でも、空調設備はどの建物でも必要になることから、高い需要と将来性が見込まれる職種です。建物を快適に使えるように環境を整える、さまざまな現場を見られるといった仕事のやりがいに加え、年収が高いという点も空調設備工事ならではの魅力でしょう。空調設備施工管理は工事の計画や品質、安全などを管理するのがおもな仕事で、管工事施工管理技士と電気工事士の資格が役立ちます。どちらの資格も比較的難易度が低めなので、将来性を考慮しても、取得する価値は高いといえるでしょう。
空調設備施工管理として就職したい場合、キャリアパートナーに相談するのも一つの方法です。建設業界の求人情報サイト「現キャリ」では、希望条件などを相談できるので、理想に合った就職先が見つかるでしょう。