スーパーゼネコンとは、ゼネコン(総合建設業)の中でも、特に売上規模や技術力、事業領域において際立った存在の企業群を指します。年間売上高が1兆円を超えることが一つの基準とされており、現在日本では、大林組、鹿島建設、大成建設、清水建設、竹中工務店の5社がスーパーゼネコンに分類されています。
この記事では、スーパーゼネコン5社について、各社の特徴やこれまでの実績、強みなどについて解説します。あわせて、金融庁が運営するEDINETに掲載された各社の「有価証券報告書」の情報をもとに、スーパーゼネコン5社の売上高・年収ランキングもまとめました。
スーパーゼネコン5社がどのような特徴を持つ企業なのか知りたい方や、転職、就職先の候補として調査したい方はぜひチェックしてみてください。
スーパーゼネコン5社とは?
スーパーゼネコンとは、ゼネコン(総合建設業)の中でも、特に売上規模や技術力、事業領域が卓越している企業を指します。年間売上高が1兆円を超えることが目安とされており、2025年5月現時点では、日本では大林組、鹿島建設、大成建設、清水建設、竹中工務店の5社がスーパーゼネコンに分類されています。
ゼネコンとは
ゼネコンとは、元請けとして工事一式を請け負う建設業を営む企業を指します。元は「General Contractor=ゼネラル・コントラクター」の略称であり、直訳では「総合請負者」となりますが、現在では「総合建設業」という意味で使われています。ゼネコンは主に施工管理を担当し、工事自体は外注に出して建設全体を取りまとめます。
建設を無事に完了させるため、コストマネジメントを担う「原価管理」、建築の質を保つ「品質管理」、スケジュール通りに進めるための「工程管理」、現場での事故を防ぐ「安全管理」の4つを中心に業務を行います。
ゼネコンの種類
ゼネコンの種別 | 年間売上高の目安 |
---|---|
スーパーゼネコン | 年間売上高 1兆円以上 |
準大手ゼネコン | 年間売上高 約3,000億円〜1兆円未満 |
中堅ゼネコン | 年間売上高 約1,000億円〜3,000億円 |
地場ゼネコン | 年間商圏エリア・営業エリア限定 |
ゼネコンには、売上規模や活動エリアによって「スーパーゼネコン」「準大手ゼネコン」「中堅ゼネコン」「地場ゼネコン」といった4つの種類に分類されています。規模が大きいほど全国規模の大型プロジェクトを手がける傾向があり、地場ゼネコンは地域密着型の工事を中心に展開しています。
スーパーゼネコン5社の年収・売上高ランキング【2025年7月最新】
順位 | 企業名 | 売上高 | 平均年収 |
---|---|---|---|
1 | 鹿島建設 | 2兆4668億300万円 | 1,164万円 |
2 | 大林組 | 2兆1,874億9,500万円 | 1,030万円 |
3 | 清水建設 | 1兆9,563億6,500万円 | 978万円 |
4 | 大成建設 | 1兆5,910億300万円 | 1,024万円 |
5 | 竹中工務店 | 1兆6,124億円 | 1,012万円 |
出典:有価証券報告書 EDINET|金融庁
※なお、上記の順位は売上高を基準としたものです。平均年収による順位付けではありませんので、年収データの比較には個別の確認が必要です。
ここでは、スーパーゼネコン5社の特徴や強み、実績について解説します。金融庁が運営するEDINETに掲載された各社の「有価証券報告書」の情報をもとに、スーパーゼネコン5社の売上高・年収ランキングもまとめました。
鹿島建設|現場重視の社風を持ち、海外事業拡大にも積極的
項目 | 数値 |
---|---|
売上高 | 2兆4668億300万円 |
経常利益 | 1,164万円 |
従業員数 | 9,235名 |
平均年齢 | 43.7歳 |
平均勤続年数 | 16.5年 |
平均給与 | 1,164万円 |
出典:有価証券報告書-第128期(2024/04/01-2025/03/31) EDINET|金融庁
鹿島建設株式会社は、1840年創業の日本を代表する総合建設会社で、東京都港区に本社を構えています。
2024年3月期の連結売上高は約2兆6,652億円で、前期比11.4%増と堅調な成長を維持しています。従業員数は8,574名、平均年収は約1,164万円、平均勤続年数は16.5年と安定した雇用環境が特徴です。
国内外の大規模インフラ整備や都市開発に幅広く携わり、技術力と提案力を強みに社会の発展を支えています。
大林組|PFI事業に強く、再生可能エネルギーに力を注ぐ
項目 | 数値 |
---|---|
売上高 | 2兆1,874億9,500万円 |
経常利益 | 1,533億円 |
従業員数 | 9,235名 |
平均年齢 | 43.1歳 |
平均勤続年数 | 16.4年 |
平均給与 | 1,030万円 |
出典:有価証券報告書-第121期(2024/04/01-2025/03/31) EDINET|金融庁
大林組は、1936年に設立され、東京都港区に本社を置くスーパーゼネコンです。2010年までは大阪に本社があったことから、西日本での実績を多く持っています。具体的には大阪駅改札内地下通路や大阪城天守閣などがあり、震災で被害を受けた熊本城天守閣も、最新技術を用いてより強固に蘇らせました。
首都圏での実績は東京スカイツリーや、すみだ北斎美術館などが挙げれます。公共施設の建設等に民間の資金や能力を活用するPFI事業(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)に強みを持っており、海外にも展開しています。
企業理念には『「地球に優しい」リーディングカンパニー』と掲げていて、近年では再生可能エネルギー事業に力を入れているのも特徴です。「地球・社会・人」のサステナビリティの実現をめざしてESG経営を推進し、SDGs達成に向けてもさまざまな取り組みを行い、貢献しています。
清水建設|トップクラスの従業員数で、女性活躍推進にも力を入れる
項目 | 数値 |
---|---|
売上高 | 1兆9,563億6,500万円 |
経常利益 | 720億3,700万円 |
従業員数 | 10,799名 |
平均年齢 | 43.1歳 |
平均勤続年数 | 16.1年 |
平均給与 | 978万円 |
出典:有価証券報告書-第123期(2024/04/01-2025/03/31) EDINET|金融庁
清水建設は、宮大工を起源として1937年に設立されたスーパーゼネコンです。清水建設の代表的な施工物件には、モード学園コクーンタワー、長崎オランダ村ハウステンボス、サンシャイン60、歌舞伎座タワーなどがあります。強みである建築部門では大規模物件だけでなく、小規模の物件にも対応しているのが特徴です。医療・福祉施設の受注高は国内トップクラスで、そのほかに社寺建築・伝統建築も得意としています。
自社内に木工事や木工製作を行う東京木工場を持っており、宮大工のころより受け継がれる木工の技術を活かして、木工事の実績も増やしています。古くからの伝統ある企業である一方、現在は女性活躍推進などの新しい取り組みにも力を入れています。2023年3月期のデータでは、スーパーゼネコンの中では最も従業員数が多い企業となっています。
大成建設|市街地再開発事業ではシェア20%を誇る
項目 | 数値 |
---|---|
売上高 | 1兆7,650億円 |
経常利益 | 389億円 |
従業員数 | 8,720人 |
平均年齢 | 42.9歳 |
平均勤続年数 | 17.9年 |
平均給与 | 1,024万円 |
出典:有価証券報告書-第165期(2024/04/01-2025/03/31) EDINET|金融庁
「地図に残る仕事。」というキャッチコピーで広く知られる大成建設は、2023年に創業150周年という、大きな節目を迎えました。市街地再開発事業を得意としているスーパーゼネコンで、その分野ではシェア20%を占めています。市街地再開発事業の実績としては目黒駅前地区や、千葉駅西口地区などがあります。
そのほかの有名な実績としては、羽田空港国際線ターミナル、新江ノ島水族館、東京芸術劇場や新宿センタービルがあり、新国立競技場などの国家的プロジェクトでも力を発揮するなど、大規模案件にも強みを持っています。スーパーゼネコンでは唯一の非同族経営です。そのため、風通しの良い社風だと考えられるでしょう。傘下には大成建設ハウジングもあり、住宅事業も手掛けています。
竹中工務店|設計施工一貫方式にこだわる抜群の設計力で受賞歴多数
項目 | 数値 |
---|---|
売上高 | 1兆5,910億300万円 |
経常利益 | 386億2,100万円 |
従業員数 | 8,024名 |
平均年齢 | 44.2歳 |
平均勤続年数 | 16.5年 |
平均給与 | 1,009万円 |
出典:有価証券報告書-第87期(2024/01/01-2024/12/31) EDINET|金融庁
竹中工務店は、有名建築家を多数輩出する優れた設計力を強みとしており、建築の職人としての精神を礎としてオリジナリティあふれる建築物を生み出しています。建築物は「作品」と呼ばれ、「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」ことを経営理念として、設計施工一貫方式にこだわりを持っています。
有名な実績としては、東京タワー、日本武道館、あべのハルカスなどで、時代を代表するような建築物を多く手掛けている企業です。
建築を専門としており、土木は子会社に任せています。設立は1909年で、スーパーゼネコンの中では唯一、非上場企業であるのも特徴のひとつです。優秀な建築作品に贈られるBCS賞や、適切な維持保全や優れた改修がなされている建築物に贈られるBELCA賞の受賞数は業界トップクラスを誇っています。
スーパーゼネコンの今後は?
スーパーゼネコンは今後も都市再開発やインフラ老朽化対応、環境配慮型建設の需要を背景に安定した案件確保が続く見込みです。万博関連工事や公共投資が支えとなり、各社とも売上・利益ともに一定の回復基調が期待されます。一方で、建設技能者の高齢化と人手不足は深刻化しており、ICTや省人化技術の導入、働き方改革が進む現場での生産性向上が急務です。
中長期では、カーボンニュートラルや災害対策需要への対応力、海外展開力が成長の鍵となるでしょう。
スーパーゼネコンへの転職は、安定した環境で高度なプロジェクトに携わりながら、自身の技術力やマネジメント力を高めたい方に適した選択肢だといえます。
スーパーゼネコンで働くには?
スーパーゼネコンでの業務はやりがいがあり、知名度も高く人気の企業であるため、入社の難易度は高いと考えられます。
スーパーゼネコンへの転職を成功させるためには、どのような段階を踏む必要があるのでしょうか。
資格や必要なスキルを身に着ける
スーパーゼネコンでの業務内容は専門的な知識が必要となるため、転職の際には条件として、資格を求められる場合が多くあります。
ゼネコンの中でメインの職種となる施工管理を目指す場合には、一級建築施工管理技士を取得していると転職活動の役に立つでしょう。工事の現場に有資格者を配置する必要があるため、有資格者が不足している場合には求人が出ている可能性があります。そのほかには、建築士や設計士の資格を求められるケースもあります。目指したい部門の求人を確認して、資格取得のための道筋を立てるとよいでしょう。
実務経験を3年以上積む
スーパーゼネコンの求人は、資格だけでなく、実務経験の条件を設けているものも多いです。同業種からスーパーゼネコンへの転職を希望している場合、もし既に資格を持っていても焦って動くことはせずに、3年以上の経験を積んでから転職活動を始めたほうが、よい結果となるケースもあると考えられます。
別業種からの転職を検討している場合には、スーパーゼネコンへの転職をチャレンジする前に、経験の積める企業に入社して実務をこなすのも1つの手かもしれません。
スーパーゼネコンのお仕事探しはベスキャリ
スーパーゼネコンへの転職を考えている場合は、建築業界に特化した転職求人サイト「ベスキャリ建設」で、キャリアアドバイザーに相談してみましょう。希望とマッチする求人をスピーディーに探すことができ、効率よく転職活動を進められます。
もし求人の内容が条件にあわない場合には、交渉を任せることも出来るので、転職活動の心強い味方となります。転職のエキスパートから適切なアドバイスを受けて、スーパーゼネコンへ転職するためにはどのようなステップを踏むべきか、計画を立ててみるとよいでしょう。
スーパーゼネコンに関するよくある質問
スーパーゼネコンとはどのような企業なのか、平均年収はどのくらいか、就職や転職は難しいのかなど、多くの人が気になるポイントをQ&A形式で解説します。
業界最大手ならではの特徴やキャリアの魅力、選考対策のポイントについてもわかりやすくまとめたので、ぜひチェックしてみてください。
スーパーゼネコン5社とは
ゼネコンの中で単体売上高が1兆円あり、完成工事高上位5社となる企業をスーパーゼネコンと呼ぶことがあります。現在では、大林組、鹿島建設、大成建設、清水建設、竹中工務店がスーパーゼネコンとされています。
スーパーゼネコンの仕事内容は?
スーパーゼネコンでは、建築工事の全体をまとめる施工管理を行います。資材や人員を調達し、スケジュールや予算を管理して工事が滞りなく進むよう監督します。
商業施設からダムやトンネルまで、幅広い建築工事を担当しています。
まとめ
スーパーゼネコンは適切な施工管理で工事現場を取りまとめ、大きなプロジェクトを成功に導きます。専門的な知識が必要になる難しい仕事ですが、働くなかでやりがいや充実感を得られるでしょう。
日本を代表するような有名建築物や大規模案件に関わることの出来る職場であり、転職先として人気を集めています。
スーパーゼネコンの中でも各社に特色があり、強みや社風も異なるため、自分の理想にあう企業を探して、転職への一歩を踏み出してみてください。