建設コンサルタントは、公共インフラ整備などの建設プロジェクトにおいて、技術的なアドバイスや支援を行う専門職です。 ゼネコンやメーカーとは異なり、計画立案や設計段階からプロジェクトに関わるのが建設コンサルタントの特徴です。求められるスキルが高い分、高年収を得られる職種だといえます。
本記事では、「建設コンサルタントの年収は高い?」「大手の給料相場が気になる」「建設コンサルタントになるには資格が必要?」といった疑問を持つ方に向けて、建設コンサルタントの平均年収や具体的な業務内容、必要な資格について解説します。
建設コンサルティング業界大手3社の年収ランキングも公開するので、大手企業の具体的な給与水準を把握することができるでしょう。キャリアアップや異業種からの転職を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
建設コンサルタントの年収ランキングTOP3!【大手3社】
建設コンサルティングを手がける大手企業3社の年収を比較し、ランキング形式で下表にまとめました。平均年収のほか、売上高や従業員数、平均勤続年数も合わせてチェックしましょう。
企業名 | 売上高 | 従業員数 | 平均勤続年数 | 平均年収 |
---|---|---|---|---|
1. 日本工営株式会社 | 約731億円 | 1,963人 (※グループ通算) |
26.5年 | 約1,006万円 (※グループ通算) |
2. パシフィックコンサルタンツ株式会社 | 約596億円 | 2,371人 | 13年 | 約700万円 (※モデル賃金) |
3. 株式会社建設技術研究所 | 約594億円 | 2,151人 | 12.4年 | 約995万円 |
出典:2024年第1期 有価証券報告書|ID&Eホールディングス株式会社
出典:ESGデータ | パシフィックコンサルタンツ株式会社
出典:有価証券報告書 EDINET|金融庁
日本工営株式会社
日本工営は、1946年に設立され、現在はID&Eホールディングスグループの中核企業として位置づけられています。
幅広い建設コンサルティング事業を展開しており、海外プロジェクトにも多数参画しています。 日本工営株式会社の売上高は約731億円です。
グループ全体で約1,963人が在籍しています。 平均年収は約1,006万円、勤続年数は26.5年と、業界内でも高水準の待遇が特徴です。
パシフィックコンサルタンツ株式会社
パシフィックコンサルタンツは、1951年の創立以来、業界をリードしてきたトップ企業です。
現在は「建設コンサルタントから社会インフラサービス企業へ」というグループビジョンを掲げ、インフラ分野に特化した事業展開を進めています。
売上高は約596億円、従業員数は2,371人と、国内最大規模の建設コンサル企業のひとつです。平均年収は約700万円(モデル賃金)、平均勤続年数は13年と、若手から中堅層まで幅広い人材が活躍しています。
株式会社建設技術研究所
建設技術研究所は、1945年に創立され、国土交通省関連のプロジェクトを数多く手がけている企業です。
特に河川分野に強みを持ち、高度な技術力に定評があります。 売上高は約594億円、従業員数は2,151人と、安定した経営基盤を持つ企業です。
平均年収は約995万円、勤続年数は12.4年で、高い技術力に見合った待遇が整っています。
建設コンサルタントの平均年収
建設コンサルタントとして勤務する正社員の平均年収は、求人ボックスの調査によると、約520万円とされています。
一方、国税庁が公表した「令和5年分 民間給与実態統計調査」では、1年を通じて勤務した給与所得者の全国平均年収は約460万円です。このことから、建設コンサルタントの年収は全体平均よりも約60万円高い水準であることが分かります。
ただし、企業の規模や勤務地、役職、担当業務などによって収入は大きく変動するため、あくまで目安として捉えておきましょう。
出典:建設コンサルタントの仕事の年収・時給・給料(求人統計データ)|求人ボックス
出典:令和5年分 民間給与実態統計調査|国税庁
そもそも建設コンサルタントとは?
建設コンサルタントは、公共インフラ整備の実現に向けて支援する技術者です。具体的には、道路・橋・上下水道・河川・公共施設などの企画や計画・設計に関する技術コンサルティングサービスを担当します。 建設コンサルタントとは、公共インフラの整備や改善に向けて、専門的な技術支援を行う技術者のことです。
道路・橋梁・上下水道・河川・公共施設などに関して、企画・計画・調査・設計といった技術コンサルティングを担当します。
建設コンサルタントの主なクライアントは、国や地方自治体などの行政機関をはじめ、国際機関や民間企業まで多岐にわたります。発注者と直接契約を結び、調査設計報告書・設計図面・設計計算書などの成果物を納品しながら、技術支援を行うことが特徴です。
また、発注者だけでなく、施工を担うゼネコンなどの施工業者に対して、施工管理や維持管理の支援を行うこともあります。社会インフラの計画から設計、施工後の運用・維持までを技術面で支える総合的なサポートを担う専門職です。
建設コンサルタントに必要な資格
ここでは、建設コンサルタントとして働くうえで取得が推奨される代表的な資格を2つ紹介します。
資格取得のメリットや受験条件、難易度についても解説します。未経験から建設コンサルタントへの転職を成功させたい方や、建設コンサルタントとしてさらにキャリアアップを図りたい方はぜひチェックしてみてください。
- 技術士
- RCCM(シビルコンサルティングマネージャ)
技術士
技術士は、科学技術に関する高度な知識・応用力・倫理観を備えた、国が認定する国家資格です。いわゆる「信頼される技術の専門家」として、社会的にも高く評価される資格のひとつです。 技術士資格には、機械・電気電子・建設・上下水道など21の技術部門があり、幅広い分野を網羅しています。
試験は「一次試験」と「二次試験」の2段階に分かれており、それぞれ年に1回実施されます。一次試験の合格者や、指定学科を修了した者は「技術士補」として登録が可能です。
なお、建設コンサルタント業界において、技術士は技術管理者として認定されるための必須資格とされており、キャリアアップを目指すうえで重要なステップとなります。
① 受験資格
技術士の受験資格は、「一次試験」と「二次試験」で異なります。
- 一次試験:年齢・学歴・実務経験にかかわらず、誰でも受験可能
- 二次試験:技術士補の資格を取得したうえで、以下のいずれかの実務経験を満たす必要がある
- 技術士の指導の下、技術士補(技術士補の登録後)として4年以上(総合技術監理部門は7年以上)の実務経験がある
- 監督者の指導の下、4年以上(総合技術監理部門は7年以上)の実務経験がある
- 指導者や監督者の有無を問わず、7年以上(総合技術監理部門は10年以上)の実務経験がある
出典:技術士資格取得までの仕組み|公益社団法人 日本技術士会
② 難易度
技術士試験は難易度が高く、合格には十分な学習と実務知識が求められます。
特に正式に「技術士」として認定される二次試験の合格率は例年10%前後で、国家資格の中でも高難度です。
- 一次試験:37.4%
- 二次試験:10.4%
また、技術士試験は21部門に分かれていますが、建設部門は二次試験の合格率が8.7%となっており、他部門よりも難関であることがわかります。
出典:日本の科学技術における最高位の国家資格 技術士を知っていますか?|公益社団法人 日本技術士会 技術試験センター
出典:令和6年度技術士第二次試験統計|公益社団法人 日本技術士会
RCCM(シビルコンサルティングマネージャ)
RCCMは、建設コンサルタント業務に必要な専門知識と実務経験を証明できる民間資格です。建設コンサルタントとしての実務に携わるうえで、RCCMの資格を有していることは、高い専門性と信頼性の証といえます。
この資格は、公益社団法人建設コンサルタンツ協会が試験の実施・認定・登録を行っており、筆記試験に合格した後、登録証の交付を受けると「RCCM」を名乗ることができます。試験は年1回実施されます。
① 受験資格
RCCMを受験するには、学歴に応じた年数の実務経験が必要です。実務経験とは、建設コンサルタント業務に従事または管理した期間の合計を指します。
- 大学院卒業(博士課程/博士課程後期):2年以上
- 大学院卒業(修士課程/博士課程前期):5年以上
- 大学卒業:7年以上
- 短期大学もしくは高等専門学校卒業:9年以上
- 高等学校卒業:11年以上
- 中学校卒業:14年以上
② 難易度
RCCMは比較的難易度が高く、十分な実務経験と専門知識が求められます。例年の合格率は30〜40%台で推移しており、2024年度の合格率は31.7%でした。
特に「道路」や「鋼構造およびコンクリート」など、受験者数の多い部門では競争が激しく、合格率も低くなる傾向にあります。合格基準は、各問題で50%以上の得点を取得し、総合で60%以上を得点することとされています。
出典:令和6年度RCCM資格試験合格発表 |RCCM資格制度事務局
建設コンサルタントが年収アップを目指す方法
建設コンサルタントは、民間企業のなかでも比較的年収が高い職種ですが、さらに収入を高める方法も存在します。具体的には、関連資格の取得や実務経験の蓄積に加え、条件の良い企業への転職などの手段があります。
ここでは、建設コンサルタントが年収アップを図る方法について解説するので、「年収1,000万円以上稼ぎたい」という方はぜひチェックしてみてください。
関連資格を取得する
建設コンサルタントにとって、関連資格の取得は年収アップを目指す上で大きな武器になります。 建設コンサルタントは、無資格でも業務に携わることは可能です。
しかし、RCCMや技術士などの資格を保有していることで、より大規模なプロジェクトに参画しやすくなります。その結果、高く評価されると、昇給・昇進につながる可能性もあります。 また、企業によっては資格手当が支給される場合もあるため、就業先の規定もあわせて確認しておきましょう。
おすすめの資格 | 特徴 |
---|---|
技術士 | 各専門分野での高度な知識と経験を証明する国家資格 技術管理者としての要件にも該当 |
RCCM(シビルコンサルティングマネージャー) | プロジェクトの管理能力や技術的指導力を示す民間資格 |
実務経験を積む
日々の業務を通じて実務経験を積み重ねることも、年収アップにつながる要素のひとつです。 実務を通して得た技術的知見や、打ち合わせ・プレゼンテーションなどの業務で培ったコミュニケーション能力、提案力は、自分の市場価値を高める要素のひとつとなるでしょう。
また、建設コンサルタントは、多様な関係者と連携しながら業務を遂行するため、対人調整力やリーダーシップも身に付きます。
さらに、技術士やRCCMなどの資格取得には一定の実務経験が必要となるため、キャリア全体の土台としても重要だといえるでしょう。
条件・待遇の良い会社に転職する
現在の職場で評価や昇給の機会に恵まれていない場合、転職によって年収アップを成功させるのも1つの手段です。たとえば、「評価制度が不透明」「昇進のポストが空いていない」といった理由で、実力を十分に発揮できないこともあるでしょう。
そのような場合は、適切に評価してくれる企業へと転職することで、スキルと収入の両面を引き上げられる可能性があります。評価制度や福利厚生が整った企業であれば、自身のスキルや経験に見合った待遇を得やすくなるでしょう。
建設コンサルタントとして活躍したい方はぜひ建設業界に特化した求人サイト「ベスキャリ建設」をご活用ください。掲載求人をチェックすることで、建設コンサルタントの募集状況や年収相場、求められるスキルの傾向を把握できます。 自分に合った企業を見つけたい方は、「ベスキャリ建設」で最新の求人情報をチェックしましょう。
建設コンサルタントに関してよくある質問
ここでは、建設コンサルタントへの転職や今後のキャリアを考える際に気になるポイントをいくつかピックアップし、Q&A形式で回答します。
気になる項目があればぜひチェックして疑問や不安を解消しましょう。
建設コンサルタントの給料は低い?
建設コンサルタントの給料は、民間企業の平均給与よりも高めです。
求人ボックスによると、建設コンサルタントの平均年収は約520万円とされています。 一方、国税庁の調査では、民間企業に勤める給与所得者の平均年収は約460万円となっており、建設コンサルタントのほうが約60万円ほど高い水準にあることがわかります。
ただし、企業規模や勤務地、雇用形態、業務内容によって年収は大きく異なるため、転職や就職の際は条件をしっかり確認しておくことが重要です。
出典:建設コンサルタントの仕事の年収・時給・給料(求人統計データ)|求人ボックス
出典:令和5年分 民間給与実態統計調査|国税庁
建設部門の技術士の年収は?
建設部門のみのデータではありませんが、求人ボックスによると技術士全体の平均年収は約432万円です。 国税庁の調査結果である「全職種平均(約460万円)」と比較すると、技術士はやや低い傾向にあります。
ただし、技術士は21の専門分野に分かれているため、活躍する分野によって年収に差が生じる可能性があります。
また、地域差や就業先企業の給与体系、実務経験年数によっても大きく影響されるので、このようなデータは参考程度にとどめておきましょう。
出典:技術士の仕事の年収・時給・給料(求人統計データ)|求人ボックス
出典:令和5年分 民間給与実態統計調査|国税庁
建設コンサルタントの大手3社とは?
建設コンサルタント業界を代表する大手3社は、以下の通りです。
- 日本工営:約731億円
- パシフィックコンサルタンツ:約596億円
- 建設技術研究所:約594億円
これらの企業はいずれも1950年前後の戦後復興期から事業を展開しており、長年にわたって高い技術力を築いてきました。 特に、日本工営とパシフィックコンサルタンツは海外プロジェクトにも積極的に取り組んでおり、グローバルな活躍も目立ちます。
出典:日本工営 : 業績・財務 : 日経会社情報DIGITAL
建設コンサルタントはやめとけと言われる理由は?
一部では、「建設コンサルタントになるのはやめとけ」「きつい」と言われることがあります。その理由として以下の3つが挙げられます。 建設コンサルタントがおすすめされない理由 大規模な公共工事に関わることが多く、責任が重い 確かな知識と経験に基づく高い技術力が求められる 仕事をしながら資格取得に向けた勉強も継続しなければならない
- 大規模な公共工事に関わることが多く、責任が重い
- 確かな知識と経験に基づく高い技術力が求められる
- 仕事をしながら資格取得に向けた勉強も継続しなければならない
プレッシャーに弱い方や、技術力向上への意欲が低い方には不向きな職種と言えるでしょう。一方で、困難を乗り越えた先に達成感を見出せる方にとっては、非常にやりがいのある仕事でもあります。
建設コンサルタントに向いている人は?
建設コンサルタントの仕事に向いている人の特徴を以下にまとめました。
- 社会貢献性の高い仕事にやりがいを感じる人
- ゼロから新しいものを生み出すことに魅力を感じる人
- 年収1,000万円など高い目標を掲げている人
社会インフラの整備に関わる建設コンサルタントは、成果物が長期間にわたって社会に貢献するという特性があります。そのため、社会貢献や創造性に喜びを見出せる方にとっては、長くモチベーションを維持しながら働くことができるでしょう。
また、建設コンサルタントは、年収1,000万円など高い目標を掲げて努力できる人に向いている職種です。専門性を高めることで、大規模プロジェクトや高収入のポジションを目指せるので向上心の高い人に向いているといえるでしょう。
まとめ:建設コンサルタントへの転職活動を始めよう
建設コンサルタントは、専門的な知識や技術力を活かして社会インフラの整備・発展に貢献できるやりがいのある職種です。年収も比較的高く設定されているため、年収アップを目指す方にとって魅力的な選択肢といえるでしょう。
転職を成功させるためには、技術士やRCCMといった関連資格の取得や、実務経験を積み重ねることが大切です。また、好条件の求人は早期に募集が締め切られることも多いため、常に情報収集を行いながら、タイミングよく行動することでチャンスをつかみやすくなるでしょう。
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