建築設計は、住宅やビル、公共施設などあらゆる建物の“設計図”を描く専門職です。
美しさや機能性、安全性を兼ね備えた建物を生み出すため、構造・設備・法規など多方面の知識が求められます。
一部では、残業の多さや責任の重さから「やめとけ」「つらい」という声も聞かれます。
本記事では、建築設計の仕事内容や分野別の特徴、年収・キャリアパス、向いている人の特徴まで詳しく解説します。
これから設計職を目指す方が、将来の選択に役立てられる内容となっているのでぜひチェックしてみてください。
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- ✓ 建築設計の仕事内容と一連の流れ(基本設計〜実施設計〜確認申請〜工事監理)
- ✓ 意匠・構造・設備の違いと役割、向いている人の特徴
- ✓ 年収相場・キャリアパス・資格取得のステップ(建築士/BIM活用)
建築設計とは?
「建築設計」とは、住宅やビル、学校、工場などの建築物について、用途・規模・デザイン・構造・設備などを総合的に計画・図面化する仕事です。
施主の要望をもとに、法律や予算、環境条件を考慮しながら最適な建物を設計します。
設計段階ではCADやBIMなどのソフトを活用し、完成後は工事が設計どおりに進んでいるか監理を行うことも珍しくありません。
建築の専門知識と美的センス、論理的思考が求められる、ものづくりの根幹を担う職種です。
出典:厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)建築設計技術者」
建築設計の仕事内容

建築設計の仕事は、施主との打ち合わせから設計、施工監理、引き渡しまで段階的に進みます。
単に図面を描くだけでなく、法令やコスト、デザイン、安全性を総合的に考慮しながら建物を形にしていくプロセスです。
ここでは、建築設計の一連の流れをわかりやすく紹介します。
- ✓ 施主へのヒアリング・要件定義:建物の用途・規模・デザイン・予算などを打ち合わせし、設計条件を整理する段階。
- ✓ 基本設計の作成(コンセプト立案):外観・間取り・動線・機能性などを検討し、建物の基本的な構想を形にする。
- ✓ 実施設計の作成(詳細設計):構造・設備・仕上げなどを細部まで図面化し、施工業者が実際に建てられるレベルに落とし込む。
- ✓ 確認申請・法的手続き:建築基準法や都市計画法に基づき、行政への申請・許可を取得するプロセス。
- ✓ 工事監理(施工段階でのチェック):現場で図面通りに施工が行われているか、安全や品質を確認する。
- ✓ 引き渡し・アフターフォロー:完成後に施主へ引き渡し、不具合対応や改修提案を行う場合も。
施主へのヒアリング・要件定義
建築設計の最初の工程は、施主とのヒアリングです。建物の用途、規模、デザイン、予算、工期、立地条件などを詳細に確認し、設計条件を整理します。
この段階では、施主の要望を正確に把握するだけでなく、法的制約や安全性、施工可能性なども考慮する必要があります。
ここでの認識のズレが後の工程に大きく影響するほど、プロジェクトの方向性を決める重要なフェーズです。
基本設計の作成(コンセプト立案)
ヒアリング内容をもとに、建物の全体構想を図面に落とし込むのが基本設計です。
外観デザイン、内部レイアウト、動線計画、採光や通風などの快適性を検討し、建物の骨格をつくります。
意匠・構造・設備それぞれの観点を踏まえた総合的な提案が求められ、施主へのプレゼンテーション資料もこの段階で作成されます。
コンセプトを共有し、承認を得た上で詳細設計へと進みます。
実施設計の作成(詳細設計)
実施設計は、基本設計で決定した内容を具体的な施工図面へと落とし込む工程です。
構造、設備、仕上げ、材料、施工方法などを細かく記載し、施工業者が現場で迷わず作業できるようにします。
この段階では、コスト管理や工期、法的基準の遵守も重要なポイントです。完成度の高い設計図を作成することで、施工段階のトラブルを未然に防ぎます。
確認申請・法的手続き
設計図が完成したら、建築基準法や都市計画法などに基づく「確認申請」を行います。
行政機関や指定確認検査機関に設計内容を提出し、建築許可を取得してから着工が可能になります。
法的な手続きは時間を要する場合もあり、手戻りを防ぐためにも設計段階での法令チェックが欠かせません。
法規への理解は、建築設計者にとって不可欠なスキルの一つです。
工事監理(施工段階でのチェック)
着工後は、設計図どおりに施工が行われているかを確認する「工事監理」が始まります。
設計者は定期的に現場を訪れ、構造・設備・仕上げの精度や品質、安全対策などをチェックします。
施工者と連携しながら、設計意図が正しく反映されるよう調整する役割も担います。現場経験を重ねることで、より実践的な設計力を身につけることができるでしょう。
引き渡し・アフターフォロー
工事が完了すると、検査・施主確認を経て建物の引き渡しを行います。
引き渡し後も、設備の不具合や修繕対応、リフォーム提案など、長期的なサポートを行うことが特徴です。
建築設計は完成で終わりではなく、建物の“その後”を見守る仕事でもあります。信頼関係を築くことで、次の案件や紹介につながるケースも多い職種です。
建築設計の主な3つの分野
建築設計の仕事は、大きく「意匠設計」「構造設計」「設備設計」の3つの分野に分かれます。
それぞれの担当者が連携し、デザイン性・安全性・快適性を両立させた建物を完成させます。ここでは、それぞれの役割と特徴をわかりやすく解説します。
意匠設計
意匠設計は、建築物のデザインや空間構成を考える仕事です。
建物の外観・内装・動線・採光などを総合的に計画し、施主の要望を形にします。
単なる見た目の設計ではなく、法律・構造・コスト・機能性を踏まえて美しく機能的な空間をつくることが求められます。
建築士の感性と論理的思考の両方が問われ、最もクリエイティブな分野といえるでしょう。
構造設計
構造設計は、建物を安全に支える骨組みを設計する仕事です。
地震・風・積雪などの力に耐えられるよう、柱や梁、基礎などの構造を計算・設計します。
構造力学や建築基準法の知識が不可欠で、建物の耐震性・耐久性を左右する重要な工程です。
意匠設計で決まったデザインを現実の構造として成立させる「縁の下の力持ち」であり、建物の信頼性を支える重要な役割を担っています。
設備設計
設備設計は、建物内の電気・空調・給排水・衛生・防災などのインフラを設計する分野です。
人が快適に過ごすための環境づくりを担い、電気負荷や空調容量、水圧などを計算して最適なシステムを構築します。
省エネやZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)などの取り組みも進んでおり、近年は環境性能を高める設計力が求められています。
建築設計(建築設計技術者)の平均年収

厚生労働省の統計によると、建築設計技術者の平均年収は約641.6万円、平均労働時間は月163時間です。
月給に換算すると約33万円前後で、経験や勤務先によっては700万円以上も可能です。
一般労働者の時給換算は2,971円と比較的高水準であり、専門的な知識と資格が求められる職種であることが反映されています。
設計事務所・ゼネコン・ハウスメーカーなど勤務先によって給与体系が異なり、管理職や一級建築士資格保有者は年収800万円超のケースもあります。
出典:厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)建築設計技術者」
建築設計(建築設計技術者)の働き方・職場など労働条件の特徴
建築設計の勤務先は、設計事務所、建設会社、ハウスメーカー、官公庁など幅広く、働き方も多様です。
仕事は工期や納期に左右されるため、繁忙期には残業や休日出勤が発生することもあります。
一方で、近年は耐震診断・リノベーション・文化財保存といった分野でも設計者の需要が拡大中です。
男女ともに活躍できる環境が整いつつあり、正社員比率は約80%、自営・フリーランスも約3割と、独立開業も比較的多い職種だといえるでしょう。
出典:厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)建築設計技術者」
建築設計になるのは「やめとけ」「つらい」と言われる理由

建築設計の仕事はやりがいの大きい一方で、「激務」「責任の重さ」「報われにくさ」といった理由から“つらい”と感じる人もいます。
ここでは、建築設計職が大変と言われる主な3つの理由を解説します。
長時間労働と納期プレッシャーが大きい
建築設計は、工期や納期に直結するためスケジュールの融通が利きにくい職種です。
図面修正や法令対応、施主との打ち合わせが重なると、残業や休日出勤が続くことも珍しくありません。
また、デザイン変更やコスト調整など突発的な要件も多く、柔軟な対応力が求められます。
特に小規模事務所では少人数で多くの案件を抱えるため、ワークライフバランスが取りにくい点が“つらい”と感じる原因の一つです。
責任が重く、ミスが許されない
設計図はそのまま施工図として使われるため、一つのミスが現場全体の損失につながる可能性があります。
構造計算や法令遵守の確認など、正確性が極めて重要で、常に緊張感を伴う仕事です。
加えて、施主や施工者、行政との調整役も担うため、コミュニケーション能力と調整力も不可欠です。
経験を積むまではプレッシャーが大きく、責任の重さに疲弊して離職する人も少なくありません。
努力に見合う報酬を得にくい場合がある
建築設計職の平均年収は厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)建築設計技術者」によると、約641万円とされていますが、若手や小規模事務所勤務では年収300万円台に留まるケースもあります。
資格取得や長時間労働に見合わないと感じる人も多く、“報われにくい仕事”と評されることも。
一方で、経験を積み一級建築士や設計管理職になると大きく収入が伸びるため、初期の苦労を乗り越えられるかが分岐点です。
努力が長期的に評価される職種であり、短期的な成果を求める人には向かない面があります。
建設設計の仕事に就くには?建築学を学べる大学は?
建築設計職を目指すには、建築に関する専門知識と資格の取得が欠かせません。
高校卒業後に建築系の大学・専門学校へ進学し、構造力学や建築法規、CADなどを学ぶのが一般的です。
ここでは、建築設計のキャリアを始めるまでの流れと、学べる大学・必要資格を紹介します。
建築設計を目指すための学歴と必要な知識
厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)建築設計技術者」によると、建築設計職の約8割は大卒以上で、大学や専門学校で「建築学」を学んでいます。
カリキュラムでは構造力学・建築材料・建築法規・設計製図などを習得し、建築士資格の受験に必要な単位を取得します。
また、CADやBIMなどの設計ソフトを扱うスキルも重要です。
入職後は現場経験を積みながら専門性を高め、建築士や施工管理技士などの国家資格取得を目指す流れが一般的だといえます。
建築学を学べる主な大学・専門学校
建築設計を学べる大学は全国に多数あり、国公立では東京大学・京都大学・東北大学・九州大学などの工学部建築学科が有名です。
私立では早稲田大学、芝浦工業大学、武蔵野美術大学、日本大学などが人気です。
専門学校では設計実習やCAD演習など実践的な授業が多く、短期間で就職を目指す人に向いています。どの進路でも、美的感覚や空間構成力を磨くことが大切です。
建築設計職として活躍するために必要な資格は?
建築設計職として活躍するには、「一級・二級建築士」や「木造建築士」の取得が重要です。
一定規模以上の建物を自らの責任で設計できるのは、建築士資格を持つ人に限られます。
さらに、技術士(建設部門)や建築施工管理技士など関連資格を取得すれば、独立やコンサルタント業への道も開かれます。
設計業務では経験が成果に直結するため、長期的なスキル形成を意識することが成功への近道だといえるでしょう。
「建築士」と「技術士」の違いは?
「建築士」と「技術士」は、どちらも建設分野の国家資格ですが、役割と専門領域が異なります。
建築士は建物の設計や工事監理を行う実務設計者であり、意匠・構造・設備の各分野で図面作成や監理を担当します。
一方、技術士(建設部門)は、より上位の立場から技術全般の計画・審査・コンサルティングを行う専門職です。
建築士が“つくる人”、技術士が“技術を監督・評価する人”といえます。両資格を併せ持つことで、設計・マネジメントの両面に強い技術者として活躍できます。
| 比較項目 | 建築士 | 技術士(建設部門) |
| 主な業務内容 | 建築物の設計・工事監理 | 技術計画・審査・コンサルティング |
| 資格区分 | 国家資格(1級・2級・木造) | 国家資格(技術系最高位) |
| 活躍フィールド | 設計事務所・建設会社など | 官公庁・建設コンサルタント会社など |
| 必要スキル | 構造・意匠・法規などの専門知識、設計実務力 | 技術全般の知見、マネジメント・分析能力 |
| キャリアの方向性 | 建築設計・監理の実務中心 | 計画・審査・技術指導など上流工程中心 |
建築設計として働く上でのやりがい
建築設計のやりがいは、自分の手がけた建物が社会に残ることです。
設計した住宅やビルが完成したときの達成感は格別で、自分の仕事が人々の暮らしや地域の景観づくりに役立っているという誇りを感じられるでしょう。
また、施主との信頼関係を築きながら一つの作品を形にしていく過程には、多くの責任と同時に大きな喜びがあります。
さらに、構造・設備・デザインなど多様な専門家と協働し、チームで成果を生み出す楽しさもあります。
- ✓ 自分の設計が形となり社会に残る
- ✓ 施主から感謝の言葉をもらえる
- ✓ 専門家と協働しチームで成果を出せる
- ✓ 経験を積むほどに技術と裁量が高まる
建築設計に向いている人の特徴
建築設計に向いているのは、創造力と論理性を兼ね備えた人です。
デザイン性だけでなく、構造や法規、コスト、安全性などを多角的に考える力が求められます。
加えて、施主や施工者など多くの関係者と調整を行うため、円滑なコミュニケーション力と協調性が欠かせません。
長期的にスキルを磨く粘り強さや、探究心を持つ人ほど成長しやすい職種です。
- ✓ 美的センスと理論的思考を併せ持つ
- ✓ 困難な課題に粘り強く取り組める
- ✓ 関係者と円滑に協働できるコミュニケーション力
- ✓ 細部までこだわれる探究心と責任感
建築設計の将来性・今後の需要【AI・BIM】
建築設計の需要は今後も安定的に続くと考えられます。
新築需要は減少傾向にある一方で、既存建築物のリノベーション・耐震改修・省エネ改修などが拡大中です。
さらに、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)や脱炭素建築の推進により、環境設計・設備設計の分野で高い専門性を持つ人材が求められています。
AI・BIMなどの技術活用も進んでおり、デジタルと建築を融合できる設計者が将来の主役となるでしょう。
建築設計に関するよくある質問
ここでは、建築設計の仕事に関してよく寄せられる疑問に答えます。
仕事内容から年収、向いている人の特徴、キャリアアップによる収入の可能性まで、これから建築設計職を目指す方が気になるポイントをまとめました。
建築設計とは何ですか?
建築設計とは、建物のデザイン・構造・設備を総合的に計画し、図面化する仕事です。
施主の要望や法律、予算、環境条件を踏まえて建物を設計し、完成までの監理も行います。
意匠・構造・設備の専門分野があり、社会に残る建築を生み出す重要な職種です。
建築設計の平均年収は?
厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)建築設計技術者」によると、建築設計職の平均年収は約641万円です。
経験や資格によって差があり、一級建築士など上位資格を取得すれば年収800万円以上も可能だといえます。
独立・開業すればさらに高収入を目指せる職種です。
建築設計職に向いている人は?
建築設計職に向いているのは、創造力と論理性を併せ持つ人です。美的センスだけでなく、構造や法規、コストなどを考慮できる冷静な判断力が必要です。
また、多くの関係者と調整するため、コミュニケーション力や協調性も欠かせません。
一級建築士で年収3000万は可能でしょうか?
一級建築士で年収3,000万円を得るには、独立開業や企業経営者として成功する必要があります。
大手設計事務所の社員としては1,000万円前後が上限で、3,000万円に達するのは稀です。
自社ブランドを持つ建築家や著名デザイナーになれば、実現可能な領域といえるでしょう。
まとめ
建築設計は、建物を“形にする”クリエイティブかつ技術的な仕事です。
高い専門性と責任が求められますが、完成した建物が社会に残る大きなやりがいがあります。平均年収は約640万円で、資格取得や経験を積めば独立も可能です。
また、ZEB(ゼロエネルギービル)やリノベーション需要の拡大により、今後も安定したニーズが続くでしょう。自分の設計が人々の暮らしを支えるという誇りを持てる職種です。
建築設計への道を考えている方や、キャリアにお悩みの方はぜひベスキャリ建設のキャリアアドバイザーにご相談ください。
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