建設物が完成するまでは時間を要するため、建設途中で雨が降ることは多々あります。建設現場で雨が降った場合、養生を行なう必要がありますが、そもそも、養生しないことによるリスク、また、作業できない工事の種類があることをご存じでしょうか?
雨の養生の必要性は、工事段階によって異なるので注意が必要です。今回は、建設現場における雨の養生の必要性、雨で中止する工事、工事段階の雨対策について解説していきます。
■建設現場で雨の養生が必要な理由
建設現場で雨の養生をしない場合、どのようなリスクがあるか見ていきましょう。
◇木材などの腐食
建設に使用する木材などが雨に濡れると、雨水を吸い込んで腐食する可能性があります。濡れたままの木材で作業を続けると、建物が完成したあとに結露やカビの発生につながりかねません。そのため、木材を使用する建物の場合、ブルーシートなどで養生しましょう。
一方、鉄骨の場合は濡れても特に問題ありません。鉄筋が雨に濡れると錆が発生しますが、錆で表面がガサガサした方がコンクリートとよく馴染むメリットがあります。
ただし、基礎と建物をつなぐアンカーボルトの場合、錆びると耐久性が下がることもあるので注意が必要です。
◇手・足が滑りやすい
施工中に雨が降った場合、手が濡れることで工具が滑り落ちることがあります。下に人がいた場合、落ちてきた工具が当たってケガをする可能性も否定できません。
また、足場は金属製のため濡れると滑りやすくなり、滑って転倒や転落するリスクがあります。安全靴から長靴に履き替えた場合は特に注意が必要です。安全靴は靴紐でしっかりフィットしますが、長靴は足よりもやや大きめです。安全靴との感覚の違いにより、段差に引っかかり、転倒や階段から落ちるケースもあるので注意しましょう。
■雨で作業できなくなる工事の種類とは?
実際の建設現場では、大雨や強風でない限り作業が休みになることはほとんどありません。雨が降った場合は、できる部分の施工を行なうのが一般的です。しかし、工事の種類により、雨や強風で作業ができなくなるケースがあります。そこで、雨で中止になる工事とその理由を紹介します。
◇塗装工事・左官工事
外での作業になる外壁の塗装工事や、屋外の左官工事は雨で中止になります。ただし、建物の外側の工事が済んでいる場合、屋内の塗装工事や左官工事は雨でも作業が可能です。天気予報や当日の雨の降り具合により、外から屋内に作業を変更することがあります。
◇掘削工事
基礎工事の一つである掘削工事は、穴を掘る作業のため雨の作業は困難です。地盤がゆるくなることで土砂崩れのおそれがあること、土を運ぶダンプで道路が汚れるといった理由があるためです。
◇コンクリート打設工事
雨がコンクリートと混ざると強度に悪影響を及ぼすため、コンクリート打設作業は中止になる可能性があります。また、コンクリート打設後に表面を仕上げる作業の場合も、強い雨が降ると作業が中止になります。
一方、数時間前にコンクリートを打設した場合は、雨が降っても問題ありません。コンクリートが固まるのは、セメントと水の水和反応によるものです。乾燥により強度が下がるうえに、表面にひび割れが発生する場合があります。あえて散水して乾燥を防ぐこともあるため、土砂降りでない限り、コンクリート打設後の雨は恵みの雨といえます。
◇屋根工事
雨の養生ができない屋根工事は、高所作業の危険が伴うことから中止になります。雨のなかの高所作業は足元が滑りやすく、墜落などの事故の危険性が高まるためです。
■建設現場の工事段階における雨対策
建設工事の段階ごとに、雨対策の必要性と対策方法が変わります。そこで、工事段階ごとにおこなう雨対策について見ていきましょう。
◇基礎工事中の雨対策
基礎工事中、コンクリートの打設前に雨が降った場合、むき出しの鉄筋が錆びることがあります。前述のとおり、鉄筋が錆びるとコンクリートに馴染むため、雨の養生は必要ありません。
ただし、コンクリート打設後に雨が降った場合、基礎と建物をつなぐ役目があるアンカーボルトが錆びていないか確認する必要があります。アンカーボルトは錆止めの加工がしてありますが、長時間の雨で加工が剥がれ、錆びることがあるためです。
◇上棟前の雨対策
上棟前の場合、1階の床下地合板が濡れないように、ブルーシートで養生する必要があります。床下地合板は「乾燥材」と呼ばれる、内部まで乾燥した板を使用することが一般的です。乾燥板は雨が染み込みにくいうえに、雨が上がると乾燥し、元に戻る性質があります。
ただし、床下地合板が乾燥したあとも凹凸が残る、または膨らんだり波打っていたりする場合は注意が必要です。床下地合板の上にフローリングを敷くため、歪みがあると床鳴りの原因になります。
◇上棟後の雨対策
上棟が終えていれば雨に濡れても問題ないため、ブルーシートなどの雨対策は特に必要ありません。
ただし、防水工事をしていない状態で雨がたまる場合や、湿った状態が続くとカビの原因になります。雨の養生は不要ですが、工事再開時に専用の機械で木材の含水率を確認することが重要です。なお、工事が可能な含水率の目安は、20%以下とされています。
◇外壁施工後の雨対策
外壁の施工まで済んでいる場合、雨の養生は基本的に必要ありません。ただし、工事の再開時に室内や床下に雨水が侵入していないか、目視で必ず確認しましょう。特に床下は蒸発しにくい環境のため、カビが発生しやすいので注意が必要です。
■まとめ
建設現場による雨は、材料により養生の必要性が変わります。基礎工事の鉄筋の場合、雨で錆びるとコンクリートと馴染む、コンクリート打設後は乾燥を防ぐメリットがあります。一方、木材が濡れた場合、しっかり乾燥しないと結露やカビの原因になるので注意が必要です。
また、屋外の塗装や左官、屋根工事、掘削工事などは雨で中止になることが基本です。そして、工事の段階で雨対策の必要性が変わるため、適切な対策をとること、カビを防ぐ乾燥対策をしっかりおこないましょう。