積算は建設業界だけに存在する業務です。積算業務では、人材や材料などの費用を拾い出し、建設工事に必要な費用を積み上げ式で計算します。ただし、正しい工事費用を算出するには、6つの構成要素を理解しておかなければなりません。今回は、その6つの構成要素のほか、積算業務の概要、積算の基本的な計算方法について解説します。
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■建設業における積算業務とは?
積算とは、建設工事前に「工事費用」を算出する業務です。工事費用は、施工に必要な費用に加え、仮設工事費、労務費などの諸費用を含めて算出します。
建設工事に積算が必要な理由は、同じ建物を建てる場合でも、すべてが同じ条件になることはあり得ないためです。施工場所、施工内容、使用する材料など、工事によって条件が異なるため、工事ごとに積算しなければなりません。
積算業務は、図面や仕様書を読み解き、発生する費用を予測する必要があります。図面を読み解くスキルに加え、工法や工事過程、専門用語などの理解、CADの操作など、建設の専門知識も求められます。
なお、積算で算出する工事費用は利益を一切含みません。積算と混同しやすい「見積もり」は、工事費用に利益を含んだ額となります。積算と見積もりは別物ですが、利益を把握するには積算によって算出される工事費用が不可欠です。
■積算業務の基本的な計算方法
積算業務をはじめる際に必要な作業、基本的な計算方法について、順を追って解説します。
◇人材の算出
積算で最初に行うのが、工事に必要な人員数の算出です。施工条件や工法を確認し、どのような資格や職種の経験を持つ人材が、具体的に何人必要かを見極めていきます。人材を検討する際、国土交通省の「公共建築工事標準単価積算基準」を参考にすることが一般的です。
また、工事の時間帯によっても人員数が変わるため、工事日程の確認も必要です。
◇材料の算出
仕様書や設計図書をもとに、使用する材料と数量を拾い出します。拾い出しの行為を「数量算出」といい、積算業務で多くの時間を要する作業です。
同じ材料でも施工方法により必要量が変わるため、施工方法ごとに「数量×単価」で材料を算出します。
図面には配線や部品も記載されているうえに、材料の項目数が多くミスが発生しやすくなります。この時点で計算を誤ると請求金額に影響するため、とりわけ慎重な作業が必要です。
◇工事費用の計算
積算業務で算出した材料数と人員数に、単価をかけて工事費用を算出します。
材料の単価は、建設物価調査会の「建設物価」、経済調査会の「積算資料」などを参考にすることが一般的です。一方、人件費は軽作業員、普通作業員、特殊作業員などに分類し、費用を算出します。
◇労務費の計算
労務費とは、工事に携わる作業員の給料のことです。労務費の計算方法は複数ありますが、歩掛(ぶがかり、ぶがけ)を使用することが一般的です。
歩掛とは、ひとつの作業にかかる手間を数値化したもので、人工(にんく)という単位を用います。人工とは、1人の作業員が8時間作業したときの作業量を指します。
歩掛を使用して1人あたりの労務費を計算する場合、「労務単価×歩合(歩掛×作業量)」で算出が可能です。なお、労務単価は、国土交通省の公共工事設計労務単価を参考にします。
■積算業務の計算に必要な構成要素
同じ設計の工事であっても、施工場所や材料の種類で工事費用が異なります。工事の規模が大きくなるほど計算が複雑になるため、積算業務では以下の構成要素をもとに工事費用を算出します。
◇歩掛
前述のとおり、労務費の算出において、歩掛は欠かせない要素です。
材料費は材料単価と数量で算出できますが、労務費は工賃を含むため、単純な作業時間では算出できません。なぜなら、同じ作業内容でも、作業員の熟練度、施工方法の難易度、作業現場、材料などで作業時間が変わるためです。
そのため、歩掛は材料の種類、作業内容、難易度で異なります。歩掛の設定は、国土交通省の「公共建築工事標準単価積算基準」にある、「標準歩掛」を参考にすることが一般的です。国土交通省の標準歩掛は、材料の種類やサイズに加え、作業員の年齢、資格、経験年数など、詳細な歩掛が設定されています。
◇工事原価
工事原価とは、利益を含まない工事費用のことで、直接工事費、間接工事費に分類されます。
◇純工事費
純工事費とは、工事費用から管理にかかる費用を差し引いたものです。管理にかかる費用とは、一般管理費、間接工事費に含まれる現場管理費です。すなわち、純工事費の内訳は、後述する直接工事費と共通仮設費に該当します。
◇一般管理費
一般管理費とは、施工と直接関係しない、企業の経営維持に必要な費用です。本社や支社勤務の従業員の給料、役員報酬、福利厚生、本社や支社の光熱費や通信費などが挙げられます。
◇直接工事費
直接工事費は、工事に直接かかる費用を指し、材料費、労務費、直接経費の3つで構成されます。直接経費とは、水道光熱費、機械経費、特許使用料などを指します。
そのなかの特許使用料は、特許権や意匠権のある施工方法や試験方法の使用料、派出する技術者の費用のことです。全体的な工事費用のうち、直接工事費は大きな比重を占める項目です。
◇間接工事費
間接工事費とは、工事に直接関係しないものの、工事に必要な費用です。間接工事費は、現場管理費、共通仮設費で構成されます。
現場管理費とは、工事現場の管理にかかる費用です。作業員以外の現場管理者の給料、保険料、福利厚生費、諸手当、広告費などが挙げられます。
共通仮設費とは、現場の作業に必要な仮設物、工事終了後の撤去費用です。足場や仮囲い、管理事務所、材料の運搬費、施工場所の測量や調査の費用など多岐にわたります。
■まとめ
積算は人材と材料の算出に加え、仮設工事費、労務費などの諸費用も計算します。工賃が発生する労務費は、歩掛を使用して計算することが一般的です。工事費用の算出は歩掛のほかに、純工事費と現場管理費の工事原価、直接工事費、間接工事費の要素があります。同じような建設工事でも積算した結果が同じになることはないため、上記6つの構成要素をミスなく計算することが大切です。
積算の仕事は数字が好き、計算が得意な方には向いている仕事とも言えます。男女関係なく、多くの方が長く活躍できる安定した仕事です。
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