東日本大震災や東京オリンピックなどの影響で、建設の需要が高騰し、各現場では人手不足の状態が続いています。そのため、建設現場に必要不可欠な施工管理職の仕事も、市場価値と需要が非常に高い状態です。施工管理職の求人はこれまでにない「売り手市場」であり、異業種からの転職を考える方も少なくありません。しかし、専門的な知識を必要とする施工管理職は、異業種、かつ未経験でも採用されるのでしょうか?
今回は、異業種から施工管理職に転職するためのポイントや、求められる条件について解説します。
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■施工管理職に異業種から転職することは可能
一般的な転職は経験や資格を重視しますが、施工管理職の需要が高いこともあり、異業種から転職する方も増えつつあります。建設業に異業種から転職する方は約60%というデータもあることから、異業種でも採用される可能性は十分あるといえるでしょう。
ただし、異業種から「施工管理の職種に転職」することは可能ですが、いきなり施工管理職の肩書きになれるわけではないので注意が必要です。施工管理者になるためには、一定の実務経験を積み、「施工管理技士」の受験資格を得たあとに、試験に合格しなければなりません。つまり、異業種から施工管理職に転職できても、現場の仕事からスタートすることがあるという点を把握しておきましょう。
経験と資格がない異業者でも採用されるのは確かですが、採用を判断する基準は何か、という点が気になるはずです。異業種からの採用を左右するのは、「応募時の年齢」が大きく関係しています。
・20代や30代以下は採用率が高い
年齢が20代・30代以下であれば「入社後に育成し、資格を取得すれば問題ない」と考える企業が多い傾向があります。若年層は、業種未経験や資格なしでも採用される可能性が高くなります。施工管理の仕事は覚えることも多いため、新しい知識を吸収しやすいという点も、若い年齢が評価される理由の1つといえるでしょう。
・40代以上は経験重視
一方、30代~40代を超えるにつれて、未経験、資格なしの採用は少なくなる傾向にあります。一定のキャリアを積んでいる年代に対し、企業側は専門性や即戦力などの経験者を求めるケースが多くなるからです。施工管理職に関する資格を持っていたとしても、実務経験がないと評価が低くなるので注意が必要です。
また、10年以上のキャリアを積んでいると、前職での仕事のやり方や習慣を引きずるケースもあります。新たな仕事に挑戦する意欲と、新たな働き方を受け入れる柔軟性があることが、40代以上の方に求められるでしょう。
■施工管理職の転職市場は売り手市場
施工管理職の需要が近年で一気に高まり、いわゆる売り手市場となったのは、「震災復興・オリンピック・老朽化・海外の建設ラッシュ」という4つの要因があります。
2011年に発生した東日本大震災に加え、日本の各地で大きな災害に見舞われています。震災復興住宅などの建設需要が高まったことで、建設作業員の人材が不足し、資格を持つ施工管理者も引く手あまたの状態です。
そして、東京オリンピックの会場の建設が始まったことも、施工管理者の需要がさらに高くなった大きな要因です。震災復興による影響を受けたまま、オリンピックの建設需要が増えたため、施工管理者の市場価値は上昇の一途をたどっています。
また、オリンピックが終わる2020年以降は、高度経済成長期に建てられた建物が築60年を迎え、修繕や建て直しの需要が発生します。建設ラッシュで多くの建物が一気に建てられたこともあり、この需要は長く続くことが予想されるでしょう。
そして、高度経済成長はASEAN(東南アジア諸国連合)でも起こっており、インドネシアやベトナムなどの建設現場に、日本人の施工管理者が赴くケースもあるようです。
■施工管理職で年収アップを狙うことも十分可能
売り手市場である施工管理職は、異業種から転職した場合、前職の年収や、収入がアップする可能性が高くなります。
施工管理職の平均年収は約450万円と、他の業種や職種と比べると高い水準です。働く環境や業務内容で年収に差がありますが、年収が高い傾向にあるのは、大規模な建物を建設する大手建設会社に就職することと、派遣社員で働くことにあります。
施工管理職に実務経験や知識は必要不可欠ですが、年収に関していえば、働く環境や働き方の影響が強いことを心得ておきましょう。
■施工管理の資格さえ持っていれば年齢は関係ない
施工管理職に異業種から転職する場合、「年齢的に無理だろう」と思う方も多いでしょう。しかし、施工管理者は必要な資格を持っていれば、年齢は関係なく仕事ができる職種です。定年後の60歳から施工管理職として採用されるケースもあり、長く働きたい方にとって施工管理職はおすすめの仕事といえるでしょう。
また、仮に資格や実務経験がなかったとしても、仕事を一つずつ確実に習得し、資格取得の勉強を両立する「やる気」があれば、施工管理者として活躍できる可能性は十分あります。業務内容が多く大変なこともありますが、施工管理者になりたいという目標に向かい、日々の業務を前向きに取り組む姿勢が大切です。
施工管理職の需要が高くなっている現在では、資格がない異業種の方でも採用されるチャンスです。施工管理職として働きたい、という熱意をアピールすると同時に、なるべく早く転職活動に移ることをおすすめします。
■まとめ
施工管理者の需要が急激に高まっており、売り手市場である今が転職しやすい状態が続いています。異業種からの転職は可能ですが、実務経験を積んでから施工管理技士を取得する必要があるので注意が必要です。
未経験で資格なしの転職は年齢が若いと有利で、40代以上は経験と即戦力が求められる傾向にあります。しかし、未経験で資格がなかったとしても、施工管理者になる気持ちが強ければ採用されるチャンスは十分あります。仕事と資格の勉強を両立するのは大変なこともありますが、目標を持って日々の業務に取り組むことが大切です。オリンピックまでは需要が見込まれるため、早い段階で転職をして経験を積み、施工管理技士の資格を取得することをおすすめします。