ゼネコンとは、「ゼネラルコントラクター(General Contractor)」の略称で、総合建設業者を意味します。
高層ビルやダムなど、国家規模の大規模プロジェクトを手がける建設業界を牽引する主要企業群です。
本記事では、ゼネコンの定義や仕事内容、やりがい、激務といわれる理由、サブコンとの違いについて解説します。
あわせて、各企業が金融庁のプラットフォームにて開示している有価証券報告書をもとに、「スーパーゼネコン」「準大手ゼネコン」「中堅ゼネコン」ごとの大手5社の年収ランキングもご紹介します。
ゼネコン業界への就職・転職を検討している方や、年収アップを目指す方は、ぜひ最後までご覧ください。
ゼネコンとは?簡単かつ分かりやすく解説
ゼネコンとはゼネラルコントラクターの略称で、大規模な建設プロジェクトの企画、設計、施工、管理まで一貫して請け負う「総合建設業者」のことです。
明確な定義はありませんが、設計・施工に加え、技術開発や品質向上のための研究機能も備えている企業がゼネコンと呼ばれる傾向にあります。
ここでは、ゼネコンとはどのような会社か、建設会社や工務店との違いは何かといった気になるポイントについて解説します。
ゼネラルコントラクターの略称で総合建設業者のこと
ゼネコンとは、「ゼネラルコントラクター(General Contractor)」の略で、日本語では「総合建設業者」と訳されます。設計・施工・研究といった本来は独立した機能を、自社で総合的に担う点がゼネコンの大きな特徴です。
高層マンションやオフィスビル、公共施設、医療施設などの建築工事をはじめ、道路・橋・トンネル・ダムといった土木工事まで、ゼネコンは大規模な建設プロジェクトを幅広く手がけています。
さらに、都市開発といった街づくり事業や、最先端の技術力を活かした新規分野への取り組みも進めており、ゼネコンの業務領域は多岐にわたります。
また、ゼネコンは建築・土木工事の元請業者として、施工全体のマネジメントを担うことも大きな特徴の1つです。複数の中小受託事業者に業務を割り振って工事全体を統括する役割も果たします。
建設会社や工務店との違い
ゼネコン(総合建設業者)は、建設プロジェクト全体を統括し、企画・設計から施工、さらに調査や技術開発までを一貫して担うのが特徴です。
これに対し、建設会社や工務店は、主に中小規模の建築工事を対象に、施工や現場管理に特化するケースが一般的です。
また、ゼネコンは高層ビルやインフラ整備といった大規模プロジェクトを手がけ、複数の専門業者を指揮しながら工程・品質・コスト・安全を総合的に管理します。このように、事業のスケールと対応範囲の広さが、建設会社や工務店との大きな違いといえるでしょう。
ゼネコンとハウスメーカーの違い
ゼネコン(総合建設業者)は、都市開発や公共インフラを支える大規模建築のプロフェッショナルです。商業施設や高層ビル、病院、庁舎、スタジアムなど、多くの人が利用する建物を総合的に企画・施工します。
プロジェクトごとに大人数の技術者や職人が関わり、数年単位の工期と巨額の予算を動かす点が特徴です。
一方でハウスメーカーは、個人や家族向けの住宅建設に特化しています。戸建住宅や小規模集合住宅を中心に、商品企画から設計・販売までを一貫して行い、標準化された工法や資材を活用することで安定した品質と工期を実現します。
ゼネコンとハウスメーカーは、規模や工期の違いだけでなく、求められるノウハウや事業領域がまったく異なるといえるでしょう。
ゼネコンとサブコンの違い
ゼネコンとサブコンの違いは、建設プロジェクト全体を統括するか、特定の専門工事を担当するかという点にあります。
サブコンとは、ゼネコンから工事の一部を請け負い、専門分野の施工を担当する企業のことです。
実際の建設現場では、さまざまな専門業者が活躍しています。たとえば、「現場作業員を管理する会社」「電気や空調などの設備工事を専門とする会社」「足場を組む鳶職」などが挙げられます。
ゼネコンは、これらのサブコンを統括し、プロジェクト全体を指揮するリーダー的存在です。全体を管理・調整しながら、サブコンと連携して建造物の完成を目指します。
つまり、サブコンは建設プロジェクトにおいて、専門的な技術と知識を提供する、欠かせないパートナーといえるでしょう。
項目 | ゼネコン | サブコン |
---|---|---|
立場 | 1次請け | 2次請け |
契約相手 | 発注者(施主) | ゼネコン |
主な業務 |
工事全体の管理 (工程・品質・原価・安全) |
専門分野の工事 (電気・空調・衛生など) |
求められる能力 | 総合的なマネジメント力 | 専門技術と実務スキル |
工事の範囲 | 全体の統括・監督 | 各工種の施工および現場作業 |
【一覧表】ゼネコンの種類!大手・中堅ランキングTOP5
ゼネコンは売上規模に応じて、大きく「スーパーゼネコン」「準大手ゼネコン」「中堅ゼネコン」の3つに分類されます。
スーパーゼネコンは、年間売上1兆円超の大手5社で、国内外の巨大プロジェクトを多数手がけています。
準大手は数千億円規模の売上を誇り、都市開発や公共工事など幅広く対応することが大きな特徴です。中堅ゼネコンは地域密着型の工事に強みを持ち、安定した実績を誇ります。
企業ごとに得意分野が異なるため、転職先を選ぶ際は事業内容や実績も確認することが重要です。
分類 | 売上規模の目安 | 主な企業名例 | 特徴・強み | プロジェクト規模 | 活動エリア |
---|---|---|---|---|---|
スーパーゼネコン | 年間売上高1兆円以上 | 鹿島建設、大林組、清水建設、大成建設、竹中工務店 | 海外展開・超大規模案件に対応 | 超高層ビル・空港・海外インフラ | 国内外(グローバル) |
準大手ゼネコン | 年間売上高約3,000億円~1兆円未満 | 長谷工コーポレーション、戸田建設、五洋建設など | 公共施設・住宅・都市開発など幅広い実績 | 大規模マンション・市街地再開発 | 全国主要都市中心 |
中堅ゼネコン | 年間売上高約1,000億円~3,000億円 | 奥村組、鉄建建設、東洋建設、東亜建設工業など | 地域密着型、特定分野に特化した高い技術力 | 地方自治体の土木・建築工事 | 地域密着(国内中心) |
次章では、ゼネコンを「スーパーゼネコン」「準大手ゼネコン」「中堅ゼネコン」に分類し、それぞれの年収ランキング上位5社をご紹介します。
【スーパーゼネコン】大手5社の平均年収・売上高ランキング
スーパーゼネコンとは、すべてのゼネコンの中で資本力や売上高、業歴で他社を圧倒する力を持つゼネコンのことです。
建築工事、土木工事ともに大規模な工事を扱うため、売上高は単独で1兆円を超える企業が、スーパーゼネコンと呼ばれます。
代表的な企業には、「鹿島建設」「大林組」「清水建設」「大成建設」「竹中工務店」の5社があります。
莫大な売上高を上げることから、従業員の年収も900万円前後という高い水準を誇るのもスーパーゼネコンの特徴といえるでしょう。
企業名 | 売上高 | 平均年収 |
---|---|---|
鹿島建設 | 2兆9,118億円 | 1,164万円 |
大林組 | 2兆6,201億円 | 1,140万円 |
清水建設 | 1兆9,444億円 | 978万円 |
大成建設 | 1兆7,650億円 | 1,012万円 |
竹中工務店 | 1兆6,001億円 | 1,032万円 |
出典:有価証券報告書 EDINET|金融庁
※なお、上記の順位は売上高を基準としたものです。平均年収による順位付けではありませんので、年収データの比較には個別の確認が必要です。
【準大手ゼネコン】平均年収・売上高ランキングTOP5
準大手ゼネコンは、スーパーゼネコンに次ぐ売上高と規模を誇る企業のことを指します。準大手の明確な定義は存在しませんが、一般的には売上高3,000億円~1兆円未満といわれています。
準大手ゼネコンに該当する代表的な企業は、「長谷工コーポレーション」「前田建設工業」「熊谷組」「五洋建設」「三井住友建設」です。
準大手ゼネコンでも、高層マンションや商業施設などの建築工事、ダムや発電所など、さまざまな事業を手掛けています。
順位 | 企業名 | 売上高 | 平均年収 |
---|---|---|---|
1 | 長谷工コーポレーション | 1兆944億円 | 963万円 |
2 | 前田建設工業 | 7,932億円 | 927万円 |
3 | 五洋建設 | 6,177億円 | 889万円 |
4 | フジタ | 5,911億円 | 915万円 |
5 | 戸田建設 | 5,224億円 | 841万円 |
出典:有価証券報告書 EDINET|金融庁
※なお、上記の順位は売上高を基準としたものです。平均年収による順位付けではありませんので、年収データの比較には個別の確認が必要です。
【中堅ゼネコン】売上高ランキングTOP5
中堅ゼネコンとは、売上高1,000億円~3,000億円前後の企業を指します。代表的な企業は、「飛島建設」「浅沼組」「東洋建設」「奥村組」「東急建設」です。
地元密着で工事を行うことが多く、小回りが利きやすいのが特徴です。
順位 | 企業名 | 売上高 |
---|---|---|
1 | 奥村組 | 2,881億円 |
2 | 東急建設 | 2,856億円 |
3 | 東洋建設 | 1,867億円 |
4 | 浅沼組 | 1,526億円 |
5 | 飛鳥建設 | 1,320億円 |
【スーパーゼネコン】大手5社の特徴・事業内容・年収水準
建設業界の花形ともいえるゼネコン。中でも「スーパーゼネコン」と呼ばれる鹿島建設、大林組、清水建設、大成建設、竹中工務店の5社は、売上高・技術力・組織規模において業界をけん引する存在です。
これらの企業は、東京スカイツリーや国立競技場など、日本のランドマークとなるような大規模プロジェクトを数多く手がけており、建設業界の発展に大きく貢献しています。
各社は、それぞれに異なる強みや企業文化を持っているため、就職・転職を検討する際には、特徴や方向性の違いをしっかりと把握することが大切です。ここでは、スーパーゼネコン大手5社の特徴や代表的な事業内容、企業文化、年収水準などを紹介します。
【鹿島建設】平均年収1,177万円
鹿島建設は、1840年創業の日本を代表するスーパーゼネコンの一つです。
国内外において数多くの実績を誇り、特に原子力発電所やトンネルなど、高度な技術が求められるプロジェクトにおいて強みを発揮しています。
近年では、環境に配慮したサステナブル建築や、ICTを活用したスマートシティ開発など、先進的な分野への取り組みも積極的に進めています。
売上高 | 2兆9,118億円 |
---|---|
経常利益 | 1,606億円 |
従業員数 |
8,854名 (うち臨時従業員 2,276名) |
平均年齢 | 41.9歳 |
平均勤続年数 | 16.4年 |
平均給与 | 1,177万円 |
出典:鹿島建設株式会社 有価証券報告書-第128期(2024/04/01-2025/03/31)EDINET|金融庁
【大林組】平均年収1,140万円
大林組は、1892年創業の歴史あるスーパーゼネコンです。官公庁など公益施設からオフィスビル、商業施設に伝統建築物まで、さまざまな建築物を手がけた実績があります。
国内だけでなく海外でも数多くの実績を持ち、特に商業施設やプラント建設分野で高い評価を得ている企業です。
近年では、屋上緑化などヒートアイランド対策が可能な環境技術や再生可能エネルギー分野にも力を入れており、持続可能な社会の実現に貢献しています。
売上高 | 2兆6,201億円 |
---|---|
経常利益 | 1,534億円 |
従業員数 |
9,386名 (うち臨時従業員 1,057名) |
平均年齢 | 42.4歳 |
平均勤続年数 | 16.4年 |
平均給与 | 1,140万円 |
出典:株式会社大林組 有価証券報告書-第121期(2024/04/01-2025/03/31) EDINET|金融庁
【清水建設】平均年収982万円
清水建設は、1804年創業の歴史と伝統を持つスーパーゼネコンです。高度な技術力と豊富な経験を活かし、国内外で数多くの実績を築いています。
特に、商業施設などの建築分野において強みを持ち、ICTを活用したスマートビルや環境に配慮した解体工法の実用化など、時代のニーズに応じた先進的な技術開発も手がけている企業です。
また、海外の土木事業においても、トンネルや橋梁などの大規模プロジェクトで高い技術力を発揮しています。
売上高 | 1兆9,444億円 |
---|---|
経常利益 | 716億円 |
従業員数 |
21,286名 (うち契約社員 2,129名) |
平均年齢 | 43.6歳 |
平均勤続年数 | 15.9年 |
平均給与 | 982万円 |
出典:清水建設株式会社 有価証券報告書-第123期(2024/04/01-2025/03/31) EDINET|金融庁
【大成建設】平均年収1,012万円
大成建設は、1873年創業の日本のスーパーゼネコンです。国内外で数多くの実績を持ち、特にトンネルや橋梁、ダムなどの土木分野で高い技術力を有しています。
また、医薬品や食品の製造施設など、エンジニアリングの事業分野にも強みをもち、設計・施工・試運転まで一貫して手がけているのが特徴です。
近技術研究所では、カーボンリサイクルセメントを用いたコンクリート製品など、次世代の建設素材の研究開発も積極的に行っています。
売上高 | 1兆7,650億円 |
---|---|
経常利益 | 389億円 |
従業員数 |
11,163名 (うち臨時従業員 329名) |
平均年齢 | 43.7歳 |
平均勤続年数 | 16.0年 |
平均給与 | 1,012万円 |
出典:有価証券報告書 大成建設株式会社 有価証券報告書-第164期(2023/04/01-2024/03/31) EDINET|金融庁
【竹中工務店】平均年収1,032万円
竹中工務店は、1610年創業の日本のスーパーゼネコンです。歴史と伝統を誇り、特に建築分野において高い技術力とデザイン力を持っています。
神社仏閣などの伝統建築から、超高層ビルや商業施設などの現代建築まで、幅広い分野で数多くの実績を造り上げてきました。
技術研究所では、木造混構造の高層ビルも手がけ、独自の耐火技術の開発も積極的に行っています。
売上高 | 1兆6,001億円 |
---|---|
経常利益 | 709億円 |
従業員数 |
13,598名 (うち臨時従業員 2,205名) |
平均年齢 | 44.4歳 |
平均勤続年数 | 19.2年 |
平均給与 | 1,032万円 |
出典:株式会社竹中工務店 有価証券報告書-第87期(2024/01/01-2024/12/31)EDINET|金融庁
【準大手ゼネコン】5社の特徴・事業内容・年収水準
建設業界において、スーパーゼネコンに次ぐ規模と実績を持つのが準大手ゼネコンです。
各社は独自の強みと技術を持ち、多様な建設プロジェクトで重要な役割を果たしています。
ここでは、特に注目される準大手ゼネコン5社の特徴や主な事業内容、年収水準について詳しくまとめました。
長谷工コーポレーション|平均年収963万円
長谷工コーポレーションは、マンション建設で国内トップシェアを誇る準大手ゼネコンです。
1937年の創業以来、マンション建設を主力事業としており、企画・設計・施工から管理・アフターサービスまで、マンションに関するあらゆる事業をグループで展開しています。
近年では、マンション建替えやリノベーション事業、海外事業にも力を入れています。
売上高 | 1兆944億円 |
---|---|
経常利益 | 833億円 |
従業員数 | 2,447人 |
平均年齢 | 40.8歳 |
平均勤続年数 | 16.8年 |
平均給与 | 963万円 |
出典:有価証券報告書 株式会社 長谷工コーポレーション 有価証券報告書-第107期(2023/04/01-2024/03/31) EDINET|金融庁
前田建設工業|平均年収927万円
前田建設工業は、1919年創業の準大手ゼネコンです。土木事業を祖業とし、トンネルやダムなどの実績が豊富です。
近年では、建築事業や海外事業にも力を入れ、総合建設会社として成長しています。「ファンタジー営業部」に代表されるように、広報活動にも力を入れており、建設業界全体のイメージアップにも貢献しています。
売上高 | 6780億円 |
---|---|
経常利益 | 456億円 |
従業員数 | 6,929人 |
平均年齢 | 43.2歳 |
平均勤続年数 | 17.4年 |
平均給与 | 927万円 |
出典:有価証券報告書 IR情報
五洋建設|平均年収889万円
五洋建設は、海洋土木工事で国内トップクラスの実績を誇る準大手ゼネコンです。1896年の創業以来、港湾、空港、海底トンネルなど、数々の国家的プロジェクトを手掛けてきました。
近年では、陸上土木や建築分野にも力を入れ、総合建設会社として事業領域を拡大しています。海外での実績も豊富で、特に東南アジアや中東地域で数多くのプロジェクトを成功へと導いています。
売上高 | 6,177億円 |
---|---|
経常利益 | 272億円 |
従業員数 | 3274人 |
平均年齢 | 41.4歳 |
平均勤続年数 | 17年 |
平均給与 | 889万円 |
出典:有価証券報告書 五洋建設株式会社 有価証券報告書-第74期(2023/04/01-2024/03/31) EDINET|金融庁
フジタ|平均年収915万円
フジタは、1910年創業の準大手ゼネコンです。大和ハウスグループに属し、建築・土木工事を幅広く手がけています。
特に、環境技術や再生可能エネルギー分野に強みを持ち、サステナブルな社会の実現に貢献しているのも特徴です。
近年では、海外事業にも力を入れており、アジアを中心にグローバルに事業を展開しています。
売上高 | 5,911億円 |
---|---|
経常利益 | 221億円 |
従業員数 | 3,398人 |
平均年齢 | 42.9歳 |
平均勤続年数 | 15.4年 |
平均給与 | 915万円 |
出典:有価証券報告書 決算公告
戸田建設|平均年収841万円
戸田建設は、1881年創業の歴史ある準大手ゼネコンです。医療・福祉施設や教育施設などの建築分野に強みを持ち、高い技術力と実績を誇ります。
近年では、環境に配慮したサステナブルな建築や、ICTを活用したスマートビルなど、時代のニーズに応じた先進的な建築物を数多く手がけています。
また、土木分野では、トンネルや橋梁などの大規模プロジェクトで高い技術力を発揮してきました。
売上高 | 5,224億円 |
---|---|
経常利益 | 254億円 |
従業員数 | 4,231人 |
平均年齢 | 44.1歳 |
平均勤続年数 | 18.7年 |
平均給与 | 841万円 |
出典:有価証券報告書 戸田建設株式会社 有価証券報告書-第101期(2023/04/01-2024/03/31) EDINET|金融庁
ゼネコンの役割と主な仕事内容
ゼネコンは、建設プロジェクト全体を統括する役割を担います。具体的には、設計、施工管理、研究開発、設備、営業など多岐にわたる業務を行います。
ここでは、ゼネコンの役割と主な仕事内容についてそれぞれ解説するので、どのような業務を担うのか気になっている方はぜひ参考にしてみてください。
設計
ゼネコンが行う設計は、「意匠設計・構造設計・設備設計」の3つに分けられます。それぞれの詳しい業務内容は、下表の通りです。
設計の種類 | 業務内容 |
---|---|
意匠設計 |
建物の外観、内装のデザイン、空間構成、色彩計画 |
構造設計 | 建物が地震、風などの外力に耐えうる構造体の設計 安全性、経済性、構造計算に基づく施工方法の立案 |
設備設計 | 建物内の電気、空調、給排水、防災などの設備システム 快適性、安全性、省エネルギー性を考慮した設備計画 |
ゼネコンの設計部ではCADなどの設計ソフトを使いこなせることに加え、設計意図を正確に伝え、現場と円滑に施工を進められるコニュニケーション能力が求められます。
施工管理
大手ゼネコンの施工管理の仕事内容とは、数ある業務の中でも特に重要な役割を担っています。
施工管理には「安全管理」「工程管理」「原価管理」「品質管理」の4大管理があり、それぞれの観点から工事全体を適切に進行させるための管理業務を行います。
施工管理の業務 | 内容 |
---|---|
安全管理 | ・建設現場における労働災害の防止、作業員の安全確保 ・安全基準の策定、安全教育の実施、現場の安全巡視 ・通路確保、作業員の労働時間管理 |
工程管理 | ・工事全体のスケジュール管理、計画通りの工事進行 ・施工計画書、工程表の作成、各工程の進捗管理、遅延対策 |
原価管理 | ・資材費、労務費、外注費などの原価管理、コスト削減対策 |
品質管理 | ・設計図、仕様書に基づく高品質な建築物の建設 ・使用資材の品質検査、施工状況の確認、完成検査 ・設計図通りの工事進行、指定部材・資材の使用確認 |
ゼネコンが手掛ける建物は規模が大きく、多くの作業員が工事に携わるため、施工管理をするうえでコミュニケーション能力やマネジメント能力が求められます。
研究開発
ゼネコンにおける研究開発とは、コストを抑えながらも高品質な建築物を実現するために、新たな技術や工法を開発する業務です。
具体的には、建設コストの削減を目的とした新工法の導入や、建築物の経済性・性能・品質を向上させるための技術開発が行われています。
近年では、耐震性の向上や施工の効率化を図るコンクリート技術の研究に加え、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を活用した生産性向上の取り組みも進んでいます。
こうした研究開発は、日本の建築技術の進化を支えるとともに、ゼネコンの社会的価値を高める重要な要素だといえるでしょう。
営業
ゼネコンの営業担当が担う業務は、高層ビルやオフィスビルといった建築物の案件獲得や、顧客対応の窓口業務です。
ゼネコンが担う建築プロジェクトは長期間に渡るため、顧客との信頼関係を築き、パートナーシップを構築することは不可欠です。
また、顧客の期待に応えるために、利用者のニーズや要望を読み取るスキルも求められます。
そして、契約条件の交渉を行い、契約書を作成することも、営業担当の重要な業務の1つです。
案件を獲得するだけでなく、設計・施工の進捗を把握し、顧客に報告する業務も行います。設計・施工部署をはじめ、社内の担当者や協力会社と連携し、引き渡しまで顧客のフォローを行います。
設備
ゼネコンの設備部門は、建物に不可欠な電気設備、空調設備、給排水設備、防災設備などの設計、施工、管理を担当します。主な業務内容は以下の通りです。
設備の業務 | 業務内容 |
---|---|
設計 | ・建物の用途、規模、利用者ニーズに合わせた設備スペースの確保 ・関連法規、基準遵守し安全性、快適性を考慮した設計 |
施工管理 | ・設計図に基づく設備工事の進捗確認 ・品質管理、工程管理、施工管理、安全管理 |
検査・試運転 | ・設備工事完了後の確認 ・計画書通りの設備設置、正常動作の確認、試運転 ・設備の性能、安全性確認 |
設備業務は、建物の快適性や機能性を大きく左右する重要な役割を担っているため、高度な専門知識と技術が求められます。
ゼネコンで働く魅力・やりがい
ゼネコンで働く最大の魅力は、スケールの大きなプロジェクトに携われることと、社会インフラの整備を通じて社会に貢献できる点にあります。
都市開発や公共施設の建設など、生活基盤を支えるプロジェクトに関わることで、目に見える形で自らの仕事の成果を実感できます。
また、責任ある仕事を通じてスキルや経験を着実に積むことができ、キャリアの成長とともに安定した収入も期待できる点も大きな魅力だといえるでしょう。
ここでは、ゼネコンで働くことで得られるやりがいや、働きがいを感じやすい理由について詳しく解説します。
手がけた建築物が何十年も残る
ゼネコンで働く魅力とやりがいの1つに、自身が携わった建築物が、何十年も残ることがあります。
時には百年を超えて社会に残ることもあり、他の仕事では味わえない深い達成感と誇りをもたらすでしょう。
また、橋やダムなどの社会インフラを整備することで、人々の生活を支え、社会の発展に貢献できます。
自身が手掛けた建築物が、家族や友人に誇れるものであり、世代を超えて語り継がれることは、ゼネコンで働く大きな魅力の1つです。
チームでものづくりに携われる
多くの人と力を合わせて1つの建物を完成させる点に、大きなやりがいを感じられます。
ゼネコンの現場では、設計者、現場監督、職人、協力会社など、さまざまな立場の人々が連携しながらプロジェクトを進めていきます。
個人では成し得ない大規模なものづくりに関われるため、完成時に大きな達成感を得られるでしょう。
関わった建築物が社会に長く残り、多くの人の暮らしを支えることを実感できる点もゼネコンで働く魅力の1つです。
高収入・スキルアップが見込める
ゼネコンで働く魅力ややりがいとして、高収入やスキルアップが見込めることも挙げられます。
ゼネコンの仕事は高度な専門知識や技術が求められるため、給与水準が高い傾向にあります。
また、資格取得支援制度や研修制度が充実している企業も多く、スキルアップを目指しやすい環境です。
大規模なプロジェクトに携わることで、高度な専門知識や技術を習得でき、自身の成長を実感できるでしょう。
さらに、海外プロジェクトを手がける企業も多いため、チャンスに恵まれるとグローバルな活躍も期待できます。
ゼネコンへの転職に役立つ資格一覧表
ゼネコンへの転職において、資格は自身のスキルや専門性を証明する強力な武器となります。
特に、建設業界は専門性が高く、資格を有していることで即戦力として活躍できる可能性が高まります。
ゼネコンへの転職に役立つ主な資格と、その特徴を一覧表にまとめました。
資格 | 特徴 |
---|---|
一級建築士 | 全ての建築物の設計・工事監理が可能 |
一級建築施工管理技士 | 大規模建築工事の施工管理に必須 |
建築設備士 | 建築設備の設計・工事監理を行う専門家 |
二級建築士 | 一定規模までの建築物の設計・工事監理が可能 |
建築施工管理技士 | 一定規模までの建築工事の施工管理を行う |
土木施工管理技士 | 土木工事(道路、橋、ダムなど)の施工管理を行う |
電気工事施工管理技士 | 電気工事の施工管理を行う |
管工事施工管理技士 | 管工事(空調、給排水など)の施工管理を行う |
自身のキャリアプランに合わせて、必要な資格を取得していくことが重要です。
ゼネコン業界の動向・トレンド・将来性
ゼネコン業界は需要の拡大と課題が交錯する「変革期」にあります。
将来性は高いものの、人材確保と技術革新の両立が、今後の成長に大きく影響するという声もあります。
つまり、ゼネコン業界では常に優秀な人材を求めているため、実務経験を積み重ねることで転職のチャンスはあるといえるでしょう。
都市再開発とインフラ整備による需要拡大
ゼネコンは今後も高い需要が見込まれています。首都圏を中心に進む駅周辺の再開発、大規模商業施設や高層ビルの建設、さらには高速道路や鉄道網の延伸など、全国各地で大型プロジェクトが動いています。
高度経済成長期に建設された建物やインフラの老朽化が進み、補修や更新工事の需要が増加していることも、安定的な受注につながっています。
海外インフラ市場への参入
国内だけでなく、海外での事業展開も加速しています。
特に新興国における水処理施設、発電所、高速道路などのインフラ開発では、日本のゼネコンの技術力や品質が高く評価されており、今後も成長性のある市場への参入が期待されています。
業界が直面する課題
一方で、ゼネコン業界には大きな課題も存在します。ウクライナ情勢や為替変動の影響で資材価格が高騰し、経営を圧迫するケースが増えています。
また、少子高齢化の影響による人材不足は深刻で、2024年からは建設業にも時間外労働の上限制や割増賃金の強化が適用され、従来の働き方を見直す必要性が高まっています。
出典:建設業 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説|厚生労働省
DXとテクノロジーによる変革
こうした課題に対応するため、業界全体でDX推進が進んでいます。
BIM/CIMやIoT、ICTの導入による設計・施工管理の効率化、現場作業の自動化を担う建設ロボットの活用など、テクノロジーを駆使した取り組みが拡大しています。
これにより、コスト削減や生産性の向上だけでなく、労働環境の改善やワーク・ライフバランスの確保も期待されます。
ゼネコンが激務といわれる理由
ゼネコンの仕事は、多数の工程を限られた工期内で進める必要があるため、工程の遅れが発生すると調整や巻き返しが求められます。
その結果、繁忙期には残業や休日出勤が増え、心身への負担が大きくなることから「激務」という印象を持つ方も多いでしょう。
しかし近年は、労働環境の改善に向けた取り組みが加速しています。建設現場ではデジタル技術やロボットを導入し、作業効率と安全性を高める試みが進行中です。
さらに設計や事務作業においても、原価管理や台帳管理のクラウド化によりテレワークを導入する企業が増えています。
加えて、2024年4月から時間外労働の上限規制が建設業界にも適用され、残業削減やワーク・ライフバランスの確保が強く推進されています。
かつて「激務」とされたゼネコンも、働き方改革とDXによって大きな変革期を迎えているのです。
ゼネコンに向いている人・適性がある人の特徴
ここでは、ゼネコンで働くことが向いている人・適性がある人の特徴について解説します。
コミュニケーション能力と調整力がある人
ゼネコンの現場では、設計者・職人・施主・行政など、多くの関係者とやり取りを行います。
そのため、自分の意見を的確に伝えるだけでなく、相手の立場を理解しながら調整できる人は大きな強みを発揮します。
現場をスムーズに動かすには、信頼関係の構築が欠かせません。
計画性と責任感を持って取り組める人
建設プロジェクトは工期や予算が厳格に決められており、その中で品質を守る必要があります。
段取りよく作業を進め、遅れが出ても冷静にリカバーする計画力と責任感を持つ人は、プロジェクトの中核として活躍できます。
柔軟な対応力と冷静な判断力を備えた人
建設現場では天候や資材調達の遅れなど、想定外の事態がつきものです。
そのようなときに臨機応変に対応し、冷静に判断して最適な解決策を導ける人は重宝されます。
特にリスク管理や問題解決力に長けた人は大きな適性を持ちます。
リーダーシップと協調性がある人
現場では多くの作業員や協力会社をまとめる立場になるため、チームを鼓舞し方向性を示すリーダーシップが求められます。
同時に、周囲と協力しながら円滑に現場を進める協調性も重要です。
働き方改革やDX推進の流れに乗り、効率的なチーム運営を実現できる人が今後ますます活躍できるでしょう。