建設現場で働く職人と言うと、とび職をイメージする方が多いでしょう。しかし、建物が完成するまでにさまざまな工程があり、工程ごとに現場職人が存在するのです。
今回は、建設現場の工事の流れと12種類ある現場職人の詳細、現場職人の楽しさとつらさについて解説していきます。
■建設現場の工事の流れ
1つの建物を完成させるために、建設現場ではさまざまな工程が存在します。そのため、建設現場では以下の順番で工程を組み、工事を進めるのが基本です。
・建物を支える土台を造る「基礎工事」
・柱や屋根などの構造部分を造る「躯体工事」
・建物を仕上げる「外装工事」と「内装工事」
・電気や水道などのインフラ整備を整える「設備工事」
・建物の周辺環境を整える「外構工事」
ご覧の通り、工程ごとに工事内容が異なるため、専門的な職人が入れ替わりで作業を行っているのです。
■現場職人は約12種類いる!
前述の通り、建設現場では各工程の作業を専門とする、多くの現場職人が活躍しています。そこで、建設現場における、約12種類の現場職人の仕事内容を紹介します。
◇土工事職人
土工事職人とは、ブルドーザーや油圧ショベルなどの重機を専門に扱う職人のことです。
基礎工事や土地造成、災害現場等で、掘削や運搬などの大規模な作業を安全に行なう土工事職人は、建設現場の花形といえます。また、建物の基礎となるコンクリートを型枠に流し込む、コンクリート打設工事も土工事職人の仕事に含まれます。
◇とび職
とび職とは、建設現場で高所作業をメインに行う職人です。
足場の組み立てや解体、鉄骨をクレーンで吊り上げる準備、鉄骨の組み立てや仮止め、コンクリートの流し込みなど、仕事内容は多岐に渡ります。建設工事の始めから終わりまでにさまざまな仕事をこなすため、建設現場におけるリーダー的存在です。
◇鉄筋工
鉄筋工とは、建物の骨組みとなる鉄筋を、施工図を基に配置、結束する職人です。
鉄筋コンクリートの床や柱を造る際、鉄筋工は施工図の通りに鉄筋の切断や加工をします。施工図で示す位置に鉄筋を配置し、針金を使って鉄筋を固定するのが鉄筋工の仕事です。鉄筋はコンクリートを流すと見えなくなりますが、建物の強度を保つ重要な役割があります。
◇鍛冶工
鍛冶工(かじこう)とは、鉄骨の溶接や、仮止めのボルトをしっかり固定する本締めを行なう仕事です。溶接で鉄骨に部材をつけたり、とび職が仮止めした鉄骨を溶接したりと、建物の強度を確保するのが鍛冶工の役割です。
◇型枠大工
型枠大工とは、コンクリートを流し込むための枠を造る職人です。施工図をもとに加工したパネルで柱や壁、床などに型枠を造り、コンクリートが漏れないように型枠を鉄パイプなどで固定します。また、コンクリートが固まったら、型枠を外すことも型枠大工の仕事です。
型枠が歪んでいると、コンクリートの見栄えや建物の強度に影響します。型枠職人の仕事は建物の仕上がりを左右するため、緻密な作業と技術が求められます。
◇外壁職人
外壁職人とは、屋根や壁といった建物の外側を工事する職人です。
かつての外壁工事はモルタルを塗っていましたが、現在では塗る手間のない、外壁材のサイディングを使うのが主流です。そのため、外壁工事をサイディング工事と呼ぶこともあります。外壁職人の仕事は、採寸・切断したサイディングを張り、すき間を埋めるコーキングまでが仕事の流れです。
◇左官職人
左官職人とは、壁や床に施すタイル貼りや塗装の下地を造る職人です
コテを使ってコンクリートを平ら、かつなめらかに仕上げるには高い技術が要求されます。左官職人が下地をいかにきれいに造るかで、建物の仕上げと見た目に影響します。
◇内装職人
内装職人とは、壁のクロス貼り、床や天井のボード張り、塗装仕上げといった、建物の最終的な仕上げをする職人です。内装工事は建物の雰囲気やクオリティに関わるため、手作業による丁寧な仕事が求められます。
内装の方法は使用する材料やメーカー、建築基準法や消防法で施工の方法が異なります。そのため、内装職人には以下のような専門領域が分かれています。
・計量鉄筋から天井や壁の下地を造る「鉄工下地組立工」
・床にタイルやカーペット、畳などを敷き込む「床仕上工」
・天井などに石膏ボードや合板を貼る「ボード張り工」
・天井や壁などの下地を塗装する「塗装工」
◇塗装職人
塗装職人とは、壁や外壁、屋根などをペンキで塗装する職人です。
塗装工事はローラーや刷毛を使ったり、スプレーで吹き付けたりする方法で作業します。塗装は建物を美しく仕上げるだけでなく、水や錆から建物を守り耐久性を高める効果があります。そのため、塗装技術はもちろん、塗装する素材や塗料に関する知識、土地の風土、色彩感覚などのスキルが必要です。
◇配管工
配管工とは、水道やガス、空調などの配管を建物内に引く職人です。
配管は直線だけとは限らず、必要に応じた角度で配管を曲げる作業も行います。配管は建物の完成後に配置するため、床下などの狭い場所で作業するシーンが多々あります。
また、配管工は洗面台やトイレ、エアコンなどの機器の取り付け、水道などの修理やメンテナンスも行います。
◇電気工事
電気工事とは、あらゆる建物内の屋内外電気設備の設計と施工を行なう仕事です。建物内の電気配線、配電盤やコンセントの据付工事、照明器具の取り付けに加え、電柱を仮設する穴堀り、セメントの補修など、電気工事とは関係ない仕事をする場合もあります。
また、電気工事は感電や漏電による火災などの危険性が高いため、電気工事に従事する場合は「電気工事士」の国家資格が必要です。電気工事士の資格がない場合、照明器具や電球の取り換え、エアコンの取り付けといった軽微な作業しかできないので注意しましょう。
◇外構職人
外壁職人とは、建物の周りを使いやすくするために整備する職人です。
外構職人が携わる仕事は、ブロック塀の基礎工事やブロックの組積作業、フェンスや門などの取り付け、土間のコンクリート仕上げ、駐車場の整備などがあります。
また、外構工事の業者により、花壇や植木、庭の芝張りといった、造園職人の仕事を兼ねるケースもあるようです。
■現場職人の楽しさとつらさ
現場職人として働くにあたり、どのような楽しさとつらさがあるのでしょうか?
◇楽しいところ
現場職人の仕事で楽しいところは、以下のような意見があります。
・現場でゼロからものづくりに携わり、完成したときの達成感や感動が味わえる
・仕事に慣れると持ち場を任され、1人で自由に仕事ができる
・現場ごとに場所が変わるので、同じ仕事でも飽きにくい
・職人から現場監督へのキャリアチェンジも可能になる
ものづくりに携わる現場職人は、完成したあとの達成感がやりがいにつながるようです。
できる仕事が増えると自信がつくだけでなく、会社から信頼を得ると持ち場を1人で任されます。
1人で段取りから始めるので責任感が必要ですが、自由にできる分、仕事が楽にできるようです。
また、さまざまな業種の現場で幅広い技術と経験を積むと、1人でいろいろな仕事ができる職人として認められます。できる仕事の種類が増えると、閑散期にほかの仕事ができるため、常に仕事が途切れません。
このように、多種多様な業務ができる職人は、現場監督にキャリアチェンジする足掛かりになります。職人経験がない人が現場監督に就くと、職人から軽く見られたり、敬遠されたりすることがありました。
一方、さまざまな業務の技術を持つ職人出身の現場監督は、職人からも元請けの業者からも頼られる存在になれるのです。建設現場をまとめる現場監督を目指し、得意分野を1つに絞らず、さまざまな業種に挑戦しましょう。
◇つらいところ
現場職人は基本的に屋外で作業するため、夏と冬は気温の管理がつらいようです。夏は熱中症で倒れそうになり、冬は寒さで手がかじかんで感覚がなくなるのはよくあります。
また、1日中外で作業することで日焼けをしやすく、ヘルメットのあご紐焼けを気にする方もいるようです。ただ、現場によるところが大きいので、一概に言えないのが現状です。
また、屋根に登って作業する瓦職人、体全体で塗装する塗装職人は、特に体力を使う仕事です。屋外の作業のつらさを含め、現場職人の仕事は体力勝負といっても過言ではありません。
■まとめ
建物を建てるには、各工程を専門とする現場職人の力が不可欠です。現場職人の業務は12種類に及びますが、それぞれが独立した仕事ではなく、バトンタッチをする形で工事が進んでいきます。
1つの工程で不備があると次の工程に影響するため、それぞれの現場職人は責任を持って仕事をすることが大切です。
現場職人の仕事は確かに大変で、つらいこともありますが、建物が完成した達成感や、仕事を任されるやりがいがあります。
また、さまざまな現場職人の業種を経験することで、職人や元請け会社から信頼される現場監督になることが可能です。