建設業では、法律によって工事現場ごとに資格者の配置が義務付けられています。「主任技術者」はその1種で、主任技術者になるには要件や資格、実務経験年数などの条件を満たす必要があります。
しかし、建設業と一口にいっても多くの業種があり、どの資格を取得すればいいか迷うことがあるでしょう。
この記事では、主任技術者になるための要件や、必要な資格、実務経験年数や資格取得の難易度について解説します。「主任技術者を目指したいけれど、何をすればよいのか分からない」「主任技術者に興味がある」という方は、ぜひ最後までチェックしてみてください。
施工管理の求人情報を探す
> 建築施工管理 > 土木施工管理 > 電気施工管理 > 空調衛生施工管理
主任技術者とは?監理技術者との違い
主任技術者とは、工事現場に必ず配置しなければならない技術者です。元請け、下請け、金額に関係なく、すべての工事現場に技術者を配置することが建設業法で定められています。
ただし、下請契約の請負代金の額が一定を超える場合、主任技術者に変わり、「監理技術者」を配置します。
主任技術者になるための方法・要件
主任技術者になるには、学歴・実務経験年数に基づく要件と、資格の有無による要件の2種類があります。
【1】学歴・実務経験年数に基づく要件
1. 高等学校の指定学科卒業後 5年以上
2. 高等専門学校の指定学科卒業後 3年以上
3. 大学の指定学科卒業後 3年以上
4. 上記1~3以外の学歴の場合 10年以上
【2】資格の有無による要件
1級および2級の国家資格者
【1】の要件にある「指定学科」とは、建設業の業種と密接な関係がある学科のことです。建設業許可の業種と、それに関連する指定学科は以下のとおりです。
許可を受ける建設業 |
指定学科 |
土木工事業 |
土木工学(農業土木、鉱山土木、 |
建築工事業 |
建築学または都市工学に関する学科 |
左官工事業 |
土木工学または建築学に関する学科 |
電気工事業 |
電気工学または電気通信工学に関する学科 |
管工事業 |
土木工学、建築学、機械工学、都市工学 |
鋼構造物工事業 |
土木工学、建築学または機械工学に関する学科 |
しゅんせつ工事業 |
土木工学または機械工学に関する学科 |
板金工事業 |
建築学または機械工学に関する学科 |
防水工事業 |
土木工学または建築学に関する学科 |
機械器具設置工事業 |
建築学、機械工学 |
消防施設工事業 |
|
熱絶縁工事業 |
土木工学、建築学 |
造園工事業 |
土木工学、建築学、都市工学 |
さく井工事業 |
土木工学、鉱山学、機械工学 |
建具工事業 |
建築学または機械工学に関する学科 |
主任技術者になれる資格と実務経験年数
主任技術者になる方法は上記の要件のほかに、1級および2級国家資格の取得と実務経験年数の条件を満たす方法もあります。
29種類の業種の主な資格と、実務経験年数は次のとおりです。
NO. | 業種 | 主任技術者に必要な主な資格 |
1 | 土木一式工事 |
2級土木施工管理技士(土木)・建設機械施工管理技士 |
2 | 建築一式工事 |
2級建築施工管理技士(建築)・建築士 |
3 | 大工工事業 |
2級建築施工管理技士(躯体)・建築士・木造設備士 |
4 | 左官工事業 |
2級建築施工管理技士(仕上げ) |
5 | とび・土木工事業 |
2級土木施工管理技士(土木) |
6 | 石工事業 |
2級土木施工管理技士(土木) |
7 | 屋根工事業 |
2級建設機械施工管理技士(仕上げ) |
8 | 電気工事業 |
電気工事施工管理技士 |
9 | 管工事業 |
管工事施工管理技士 |
10 | タイル・れんが ブロック工事業 |
2級建築施工管理技士(躯体)・建築士 |
11 | 鋼構造物工事業 |
2級土木施工管理技士(土木) |
12 | 鉄筋工事業 |
2級建築施工管理技士(躯体) |
13 | 舗装工事業 |
2級土木施工管理技士(土木) |
14 | しゅんせつ工事業 |
2級土木施工管理技士(土木) |
15 |
板金工事業 |
2級建築施工管理技士(仕上げ) |
16 | ガラス工事業 |
2級建築施工管理技士(仕上げ) |
17 | 塗装工事業 |
2級建築施工管理技士(仕上げ) |
18 | 防水工事業 |
2級建築施工管理技士(仕上げ) |
19 |
内装仕上工事業 |
2級建築施工管理技士(仕上げ)・建築士 |
20 | 機械器具設置工事業 |
技術士試験 |
21 | 熱絶縁工事業 |
2級建築施工管理技士(仕上げ) |
22 | 電気通信工事業 |
電気通信工事施工管理技士 |
23 | 造園工事業 |
造園施工管理技士 |
24 | さく井工事業 |
技術士試験 |
25 | 建具工事業 |
2級建築施工管理技士(仕上げ) |
26 | 水道施設工事業 |
2級土木施工管理技士(土木) |
27 | 消防施設工事業 |
甲種消防設備士・乙種消防設備士 |
28 | 清掃施設工事業 |
技術士試験 |
29 | 解体工事業 |
2級土木施工管理技士(土木) |
(※2級土木・建築施工管理技士のカッコ内は試験種別、年は実務経験年数)
上記の国家資格のほかに、職業能力開発促進法に基づく技能検定、一部の民間資格でも主任技術者になれます。
ただし、1年、または3年の実務経験年数が必要のため、国家資格を取得することが主任技術者になる近道といえるでしょう。
主任技術者に必要な資格の難易度
主任技術者になれる、代表的な資格の合格率と試験の難易度を紹介します。建設業界でキャリアアップを目指す方は、下記のいずれかの資格を取得するのがおすすめです。
2級施工管理技士の難易度
1級施工管理技士および2級施工管理技士は、主任技術者になれる代表的な資格です。2級の学科試験は17歳以上が受験資格のため、主任技術者を目指すなら2級を取得するといいでしょう。
ただし、実地試験に進むには、「建築・躯体・仕上げ」の3種別に応じた実務経験年数を満たす必要があります。
そこで、建築・土木・電気工事・管工事の各2級試験における、令和元年度の合格率を紹介します。
種類 |
2級の合格率 |
|
建築 |
学科:31.6% |
実地:27.1% |
土木 |
学科:67.1% |
実地:39.7% |
電気工事 |
学科:56.1% |
実地:45.4% |
管工事 |
学科:69.3% |
実地:44.1% |
施工管理技術検定試験は、種類によって合格率に差があることがわかります。この試験は試験範囲が広く勉強に時間がかかること、実地試験で出題される経験記述の問題が難しいことが影響しているのでしょう。
経験記述ではこれまでの実務経験や施工内容をわかりやすく文章にまとめる必要があるため、一般的な試験勉強とは異なる角度の対策が必要です。
2級建築士の難易度
2級建築士の合格率は総合で20%台、学科試験で30%前後と難易度が高い傾向にあります。一方、課題が事前に公表される設計製図試験は、合格率が50%台と高くなるのが特徴です。
また、2級建築士の難易度は、受験資格も含まれます。建築系の指定学科の大学を卒業、といった学歴がない場合は7年以上の実務経験が必要です。簡単に受験できないからこそ、2級建築士の価値が高くなるのでしょう。設計に興味がある方は取得して損はないといえますが、主任技術者を目指す場合は難易度が高い試験といえます。
技能検定(技能士)の難易度
技能検定とは職業能力開発促進法が実施する制度で、技能が国に認められて「技能士」と名乗ることができます。
技能検定は1級~3級に分かれており、主任技術者では2級以上の取得が必要です。2級の合格率は28%前後とやや難易度が高いうえに、3年以上の実務経験が必要になります。技能検定に合格後、すぐ主任技術者になれるわけではないので注意が必要です。
第2種電気工事士の難易度
第2種電気工事士は、電気工事業の主任技術者になれる資格です。試験の合格率は60%前後と難易度が低く、受験資格もないので受験しやすいメリットがあります。
過去問をくり返し勉強すれば合格できる試験といわれており、電気工事に携わる方におすすめの資格です。ただし、資格が取得しやすい反面、3年以上の実務経験が必要になります。
まとめ
主任技術者は、工事現場に配置しなければならない技術者のことです。学歴と実務経験の要件、または資格で主任技術者として認められます。
主任技術者になれる資格はいくつかありますが、難易度は資格によって異なります。携わっている業種に合う資格で、できるだけ難易度が低いものを選ぶことが主任技術者になる近道といえるでしょう。